コロナ禍の飲食「ラーメン店」「焼肉屋」が安全な訳

新型コロナウイルスの感染予防対策などをめぐっては、さまざまな情報が出回っており、私たち1人ひとりの「リテラシー」も重要になってきている。デマやフェイク情報に振り回されないためにはどうしたらいいのか。本稿では、仙台医療センター臨床研究部ウイルス疾患研究室長の西村秀一氏の著書、『もうだまされない 新型コロナの大誤解』から、コロナ禍における、安全な飲食店の見極め方を解説する。

■風を読んで、ウイルスを見る

「手狭な店ですが、安全ですか?」「どうしたら感染リスクを抑えられますか?」 といった相談を、よく受けます。「飲食店」と一口に言っても、店の規模も違えば店内の設備や環境も違います。「この種類の店はこうしろ」と、十把ひとからげにして語るべきではなく、1つひとつの店ごとに個別に決めなくてはなりません。

判断の決め手は、「風を読んで、ウイルスを見る」ことです。 感染者がいても、空間のどこにでもウイルスがいるわけではありません。口や鼻から出たエアロゾルが、希釈されながら風の流れに乗って移動します。

どれくらいの量なのか、こっちへ飛んでくるのか、あるいは自分から遠ざかっていくのか。あまりおそれすぎず、冷静な観察で判断することです。とはいえ、判断しろと言われただけでは、なかなか自分では決めづらいでしょう。例を挙げて見ていきましょう。

屋内の店舗・施設なら、ちゃんと換気をしていれば、ウイルスは空気の流れに乗ってどこかへ飛んでいってくれます。

換気がしっかりされている代表的な場所が、ラーメン店です。客同士の距離が近く飛沫が飛んでいそうな気がするかもしれませんが、私がよく行くようなカウンターと小上がり1つくらいの小さな店は、リスクが少ない「安全地帯」です。

なぜかと言うと、麺を茹でる湯気や炒め物の油やにおいが店内に充満しないよう、強力に換気をしているからです。換気扇を見て大きなものを使っている店は安心していいでしょう。客が多くても隣同士でマスクを外して大声で会話しない限り、まずは大丈夫。ドアを開けておくような店なら、さらに安全です。

ところが最近は飲食店に対する新型コロナ対策のガイドラインとして、客とキッチンをビニールカーテンで仕切るように指導されていると聞きました。そうしないと補助の対象から外されるそうです。これはまったく逆の指導です。

焼き肉店はその点、キッチンの換気扇に頼らなくても、客の前に強力な換気装置があり、煙と一緒に周囲の空気を瞬時に吸い込んでくれるので、グリルを囲んだ対面の会食でも安全です。

■アクリル板を置いても免罪符にならない

反対に狭くて閉め切った店は危険です。特に地下にある店は要注意です。いくらテーブルの上のアクリル板で直線に近い軌道で飛ぶ飛沫を防いでも、強力な換気設備がないかぎりエアロゾルはどんどん溜まるだけで外に出ていきません。 アクリル板を置いたからといって、対策をしているという免罪符にはなりません。

また、対座において座る席を、正面を避けて斜め向かいにしたとしても、エアロゾルに対しては完全に誤差範囲であり、何ら防御になりません。こうした店はコロナに限らず、他の呼吸器系のウイルス感染症が流行することもあるので、抜本的対策を考えるべきです。

基本的には換気あるのみです。空間除菌は役に立ちません。他の唯一の手段は強力な空気清浄機ですが、効果的に使うためには条件があります。店全体の空気がいつでも清潔に保たれるように工夫することで、客足を呼び戻すこともできるでしょう。

少し大きくてテーブル数が多いような店では、可能なら自分で風を読んで席を選び、危険から逃れましょう。もしできないのなら、なるべく短時間で切りあげることです。

また、店の中で大きな音量で音楽や番組を流しているようなお店、騒音の大きいお店には注意が必要です。客同士の会話が自然に大声になっていき、それだけリスクは高いと見た方がいいからです。お店側もそういった面にも注意を払うべきです。

店の中で一番安全なのは、空気清浄機の吹き出し口からの風が感じられるような位置、次に小さなラーメン屋さんとかお好み焼き屋さんで、目の前に大型の換気扇がつり下げられているようなカウンター席や、風が感じられる出入り口に近い席。ただし、カウンターと目の前の厨房が仕切られていないことが大前提です。

初めての店に入ったら、まずは換気を確認しましょう。窓からの換気、それがなければ、大型空気清浄機と換気扇を季節に合わせて、風の流れを計算して、上手に組み合わせて使っているか。こういう店ならひとまずは安心でしょう。

■「屋外」で安全を確保するには?

バーベキューでもクラスターが出たので「バーベキューが悪い」と犯人扱いされていますが、バーベキューそのものは、まったく悪くありません。普通は、戸外は風があるので排出されたエアロゾルは滞留しません。その上、バイキングや大皿料理も含めて、食べ物から感染する可能性はまずありません。

ただし、お酒を飲んだりして人との距離が近づいた状態でマスクを外して騒ぎ続ければ、たとえ屋外でも、密になった人の輪にエアロゾルが溜まる状態ができ、感染のリスクが生じます。これは何も、変異株を持ち出してきて言うことではありません。

屋外のビアガーデンも同じこと。限られた空間に、1人でも多くの人に入ってもらうことが大切だった時代はもう終わりました。これからはゆったりと余裕を持った席の配置で、風がよく通る店が受け入れられるはずです。経営者は、風通しのよさを意識して営業しましょう。

西村 秀一:国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルス疾患研究室長

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