コンビニATMの「消滅」がほぼ確実と言われる理由

コンビニエンスストアからATM(現金自動預け払い機)が消える──。今やネット通販市場の広がりでクレジットカード決済は当たり前。店舗でもスマートフォンによる決済や、ビットコイン(仮想通貨)の拡大でキャッシュレス化の波は大きなうねりとなり、否が応でもコンビニATMの存在自体を脅かす。銀行がATMの縮小に動くなかで、最終局面にきているのか。(流通ジャーナリスト 森山真二)

減少する銀行ATMの受け皿になってきたコンビニ

セブン銀行などコンビニATMの設置台数は、コンビニ店舗数の増加に伴って拡大してきた。セブン銀行の設置台数が2万3368台(17年2月末)、またファミリーマートが主導し中堅コンビニが加入するイーネットが1万3272台(17年10月末)、ローソンが1万2350台(17年11月末)となっている。

コンビニ各社の出店加速化で、コンビニATMの設置台数も順調に伸びてきた。店舗には必ずATMが付き物だから、今でも台数だけは順調に増えている格好だ。セブン銀行も18年2月期は前期比で900台の純増を見込んでおり、セブン-イレブン店内や店外での設置が進んでいる。

なかでもセブンのATM設置台数は、メガバンク3行の合計の設置台数よりも、さらに多いという存在感を示している。

先述した通り、コンビニATMが銀行ATMの受け皿となってきたのは事実で、セブン銀行は600以上に上る金融機関と提携、またファミマが主導するイーネットはメガバンクや地銀など66行からの出資を受けて金融機関との関係を緊密化、コンビニのATM運営会社は手数料収入を軸に収益を上げてきた。

最近では、稼働率が下がった銀行のATMが“お荷物”となっているという論調も目立ってきている。メガバンクとりそなグループ傘下の2行を合わせた都市銀行の台数は2001年以降、コンビニATMの急ピッチな増加と裏腹に約15年間で1割減少した。

金融機関のなかには「ATMはコンビニに任せればいい」という方針で、自前のATMをゼロにした金融機関もある。

ATMの導入コストは、1台当たり300万円程度とバカにならない。今や積極的に投資する金融機関は少なく、なかには中期的にATMを半減させるという金融機関もあるという報道もある。銀行ATMが漸減傾向をたどっていくのは確かだろう。

利用件数は漸減傾向が顕著オリンピックがターニングポイント

とはいえ、コンビニのATMが安泰かというとそうでもなさそうだ。

というのも、ATM1台の1日あたりの利用件数を見れば、低下傾向が顕著になってきたからだ。

株式を公開しているセブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン銀行の例をみてみると、2012年度に111.1件あったものが14年に100.9件、16年に95.5件まで落ち込み、17年度の計画も期初の94.7件から最近94.3件に修正するという状態である。平均利用件数の漸減傾向は顕著になってきているのだ。

恐らく、ファミリーマートやコンビニ各社で構成するイーネットや、ローソン・エィティエム・ネットワークスも同じ問題を抱えているのは間違いないだろう。

セブン銀行は、ATMさえ設置してしまえば、後はチャリンチャリンと手数料が入る仕組みで、これまでグループの「ドル箱」的存在だった。初期投資も、銀行ATMに比べて不要な機能を省いているため、100万円台後半と銀行の3分の2以下で済んでいるため、積極的に設置台数を増やしてきた。

しかし、セブン銀行も17年3月期の「経常利益」は、ついに前期比1.2%減とわずかながらだが減益に陥った。売上高に相当する「経常収益」も同1.3%の伸び率にとどまっている。

もちろん、ATMが2万3000台以上になり、1台当たりの稼働率が落ちるのは当然だという指摘があるかもしれない。

しかし、セブン銀行の事業活動における「リスク」のところに示されている「リスクの兆候」が表れてきたとも言えなくないのだ。

「将来、クレジットカードや電子マネー等、現金に代替し得る決済手段の普及が進むと、ATM利用件数が減少し、当社の業績に影響が及ぶおそれがあります」

この一文は、セブン銀行の「事業活動リスク」に示されているものだ。まさに、今後はこのような「決済革命」が進みそうなのだ。

これに対し、「いやいや日本人の現金信仰には根強いものがある。そんな簡単に現金が不要な世の中にはならない」と見る向きもいるだろう。

確かに日本人のクレジットカード利用率は15~16%と低い。中国や韓国のように50%を超えているような国は極端なケースとしても、米国ではデビットカードとクレジットカード合わせて35%と現金離れが進んでおり、ネット通販市場のクレジットカード決済比率の拡大で今後は一段と現金離れが進むとみられている。

ひるがえって日本はどうだろうか。今後2020年の東京オリンピック・パラリンピックが一つのターニングポイントになるとみられている。

オリンピックで来日する外国人客の受け入れ態勢の整備として、カード決済は重要なポイントである。そうでなくても訪日外国人は年々増加しており、決済手段としてカード払いができないと、せっかくの訪日外国人客によるビジネスチャンスを逃してしまうことになる。

サヨナラ、ATM現金よ、今までありがとう

「サヨナラ、ATM。現金よ、今までありがとう」──。

三井住友銀行は、こんな広告を打ち出しデビットカードの取り扱いを開始した。米国など外国では、クレジットカードのように使い過ぎないデビットカードは人気がある。訪日外国人の増加などもあり、日本での利用が広がると判断してのことだろう。

日本ではネット通販市場も拡大中だ。中国や米国のように急ピッチではないが、2016年の日本国内の消費者向け電子商取引(EC)市場は15兆1358億円に拡大(前年比9.9%増)している。

ネット通販もクレジットカード決済を広げることになり、現金の必要性を希薄させる一因となりそうだし、仮想通貨ビットコインも新たな決済手段として活用する動きがジワジワと広がっている。多様な決済手段の拡大は確実にATM包囲網を築く。

セブン銀行やイーネットなどコンビニATMは銀行のATMの縮小で、残存者利益を獲得するという見方もある。

セブン銀行は、来春からATMによる現金受け取りサービスを展開。オークションやフリマなどの売り上げ金、報酬金など企業から個人への現金送金にATMを活用してもらうというサービスだが、果たしてどれくらいニーズがあるか未知数ではある。

スマートフォンによる決済が進めば現金を持ち歩くリスクも減るし、決済もスマートフォン上で済ますような「Amazon Go(アマゾンゴー)」といった無人コンビニのようなサービスも増えるのに違いない。“脱現金化”は確実に進む。

コンビニからATMが消える日は意外に近いのかもしれない──。

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