テレビ東京の一部番組で出演者がマスクを着用する取り組みを始めたことを受け、視聴者からは他局も倣(なら)うべきとの意見が高まっている。 <【動画】「マスクを着けないよう工夫をしていきます」出演者が意図説明> こうした声をどのように受け止めているのか。民放キー局とNHKに聞いた。 ■86%が「着用すべき」との調査も テレビ東京・BSテレビ東京の報道3番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」「Newsモーニングサテライト」「日経モーニングプラスFT」は2021年1月中旬から、出演者がスタジオ内でトークをする際、マスクを着用することを決めた。 テレビ東京広報局は19日、J-CASTニュースの取材に「テレビ東京グループのニュース番組では、これまでも、出演者同士、またスタッフとの間の距離を十分に取り、感染を防いできましたが、市中の感染が拡大する中、より一層、スタジオの感染対策を強化することが必要だと考えて、キャスター同士がトークをするような場面ではマスクを着用することに致しました」と狙いを説明した。 各番組では、「お聞き苦しい点もあるかと思いますが、ご了承のほどよろしくお願いいたします」「様々なご意見があると思いますので、よろしければ番組のSNSにご意見、ご感想をお寄せください」と理解を求めている。SNS上では、防疫意識の高さや、意見を積極的に募る姿勢を評価する声が多数寄せられている。危機感の醸成に役立つとの指摘もあった。 ヤフーのアンケート企画「Yahoo!ニュース みんなの意見」で1月19日から実施している「番組出演者のマスク、どうあるべきだと思う?」との問いには、86%が「着用すべき」と回答している(22日時点。約2万2000人回答)
NHK、日テレ、テレ朝、TBS、フジの見解
テレビ各局はテレ東の動きをどう見ているのか。(1)出演者の主な感染防止対策(2)「テレ東の対応に他局も倣うべき」との意見への受け止め(3)出演者のマスク着用を義務化する意向はあるか――など共通の内容を尋ねたところ、回答は次の通りだった。 「ニュース番組や情報番組などでは感染防止の取り組みとして、保健所の指導を仰ぎながら、キャスター同士の距離を置くとともに、飛沫を防ぐために出演者の間にアクリル板を設置してお伝えしています。また、取材・ロケ・収録を実施するにあたり、リモートでの対応を活用しつつ、出演者や取材対象などの意向や体調を十分確認するなど、感染対策を徹底して適切に対応しています。出演者がマスクを着用していないことについて、視聴者の皆さまからは様々なご意見が寄せられています。詳しい内容については、お答えを差し控えさせていただきます」(NHK広報局) 「引き続き感染防止対策をし、今後も安全と安心を最優先に番組作りを進めてまいります」(日本テレビ広報部) 「番組制作につきましては、日々の感染状況の変化等に細心の注意を払いつつ、感染拡大防止に向けた社内の分野ごとの番組制作ガイドラインの遵守をさらに徹底しながら、より慎重に進めてまいります。なお、他局の放送内容につきましてはお答えは控えさせていただきます」(テレビ朝日広報部) ※同局の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」の1月20日放送回では、テレ朝社員の玉川徹さんが「(マウスシールドについて)僕もテレビを観ていて違和感を感じる。(飛沫が)ダダ洩れですよね、マスクの意味が全然ありませんよねっていう。エクスキューズとしてやってるんだもんね、テレビも。そういうのはやめた方がいい、テレビ局も、テレビ朝日も。意味ないから。逆に悪い影響が出ている。テレビ東京はニュース番組でもマスクをすると決断に出た。僕は頭が下がる思いで観ていました」と見解を述べている。 「報道番組では、現在、スタッフ全員のマスク着用を徹底したうえで、スタジオ内でアクリル板を設置して、出演者間の距離を十分に確保し、ゲスト等はリモート出演して頂いてスタジオ内の人数を可能な限り減らすなど、感染防止を最優先に対応しています。今後の感染状況等を注視し、さらに対策を講じるべきかどうか、適切に対応して参ります」(TBSテレビ広報部) ※同局の情報番組「新・情報7daysニュースキャスター」の1月9日、16日放送回では、オープニングトーク時に、距離の近さを理由にタレントのビートたけしさん、アナウンサーの安住紳一郎さんがマスク姿で登場した。安住さんは「たけしさんが意外にマスクをしながらでも声が聞き取れるとネットで話題沸騰していましたよ」と反響を紹介している。 「現時点でスタジオにおいては、充分なソーシャルディスタンスを確保する、リモート出演を増やす、アクリル板を設置するなど、様々な感染対策を講じていると考えております」(フジテレビジョン広報推進部)
マスク着用が進まない理由は
マスク着用には懸念もあるようだ。 NHKの正籬聡放送総局長は1月20日の会見で、テレビ東京の取り組みについて聞かれると、聴覚障害のある視聴者が口元や表情を見て会話を理解するということもある、との旨の発言をした。 自治体の首長会見でも、聴覚障害者に配慮して手話通訳を導入の上でマスクを着けないケースが見受けられる。 大阪府の吉村洋文知事は20年4月13日の会見で「この会見をやっている最中に、聴覚障害の方から、マスクをしながらしゃべっていたら何を言っているか分かんないからマスクを外してやってくださいというようなお話がありました」と報告している。東京都では、小池百合子知事の会見動画を21年1月15日から字幕付きで配信しはじめた。 なお、厚生労働省は、発達障害による触覚・嗅覚の感覚過敏など、何らかの理由でマスクの着用が難しい人もいるとして、「国民の皆様のご理解をお願いいたします」と呼びかけている。 (J-CASTニュース編集部 谷本陵)