トヨタがカーレンタル空間をオープン

トヨタ自動車は2017年10月5日、新スポット「DRIVE TO GO BY TOYOTA」を名古屋の新たなランドマークであるグローバルゲートにオープンさせた。そこでは、同社の自動車や「i-ROAD」がレンタルできる。自動車メーカーのトヨタ自動車が、なぜシェアを軸にした施設を開設したのか。同社 国内企画部長の長田准氏に聞いた。

空間デザインには、ガラス張りの開放感あふれるカフェスタイルを採用。グランピングをイメージし、レンタカーは全て白色に統一した(在庫状況によって、白以外の貸し出しの可能性もある)。

自動車を販売するのではなく体験や経験を提供する場所に

トヨタ自動車が「DRIVE TO GO BY TOYOTA」をオープンした目的は、大学生などの若年層や地域の人が自動車に接触する機会をつくり出すことにある。背景には、若年層の”クルマ離れ”や自動車活用ニーズの多様化など、自動車を取り巻く環境の大きな変化がある。同社国内企画部長の長田准氏は、次のように話す。

「今回の施設がある周辺地域を視察したところ、大学や企業、若い世帯が住むマンションが多いことがわかりました。ちょうど同じタイミングで、東京のある販売店が大学に自動車を貸して、大学生に試乗してもらう企画を行っており、その取り組みから”クルマ離れ”といっても、大学生は自動車に全く興味がないわけではない、という手応えを得ていたのです。しかし、興味を持っているのは『所有』に対してではなく、『SNS映えする体験』であり、その体験をつくる手段として自動車が利用されていました。そこで、まずは購入してもらうという目的は置いておき、自動車を体験してもらおうと、プロジェクトをスタートしたのです」(長田氏)。

新施設では、最短1時間から同社のコンパクトカーやハイブリッドカー、ミニバンなどの貸し出しや、近郊のドライブスポット案内、次世代パーソナルモビリティ「i-ROAD」の公道走行体験などを提供している。「i-ROAD」は、電気を動力源としたコンパクトな移動支援機器。3輪仕様で、左右の前輪が上下して車体の傾きを最適に制御する機能などを採用し、その快適性と安定性から次世代の乗り物として注目を集めている。

また、施設には若年層や地域の人々が気軽に立ち寄ることができるカフェも併設。サンドイッチやカレー、ドーナツ、コーヒーなどを販売しているほか、Wi-Fiも無料で使える。

「カフェで買った食事を持って、車に乗って出かけてもらいたいと考えています。その出かける先も、こちらで提案しています。また、『i-ROAD』という新しい乗り物に乗って、周辺に出かけてもらうことで自動車の持つ新しい可能性を、特に大学生などの若い世代に感じていただきたいと思っています」(長田氏)。

自動車で移動する楽しさを伝えトヨタのサービス拡大を狙う

「DRIVE TO GO BY TOYOTA」が提案するのは、クルマで移動する楽しさだ。その体験や経験を、InstagramなどのSNSに投稿してもらうことで、同社の自動車やサービスの情報を広げていくという狙いがある。

「当社の新入社員を見ていてもそうですが、若年層は外に出ることが好きなようです。僕らの時代もキャンプやバーベキューに行くことは楽しかったのですが、今の若年層はそれをInstagramなどのSNSに投稿し、自分たちはこんな生活をしているとパフォーマンスしています。そうした行動を自動車の移動とマッチングさせることで、我々の提供するサービスがもっと広がるのではないかという期待があります」。

オープンから約1カ月経ち、来店客数は目標の約8割(集客目標は月間5000人)。メインターゲットである若年層へのプロモーションは、これから本格的に行う予定だ。その一方で、想定外だった40~50代の来店も増えているという。

「これは発見でした。『自動車の体験は楽しい』、『i-ROADから次世代の乗り物の匂いを感じた』など好意的な声をもらえたのです」(長田氏)。

「i-ROAD」の公道走行は、名古屋市では初の取り組み。20分程度の座学講習と実技講習を受講後、インストラクター先導のもと、名古屋市内を周遊できる。体験プログラムは70分1000円だが、予約は3~4カ月先まで埋まっているという。

その他、レンタカーは1時間1000円で借りることができ、25歳以下の若年層にはレンタル時間によってサンドイッチとコーヒーを無料でサービスする学割制度を設けている。また、クーラーボックスなどの無料貸し出しも行い、アウトドアをサポートする工夫がなされている。

「『DRIVE TO GO BY TOYOTA』でクルマを借りて、気軽にどこへでも行ってもらえればと思っています。まだ学生向けのプロモーションが十分にできていない状況ではありますが、先日は愛知大学の大学祭でフライヤーを配布しました。今後は、近隣のオフィスワーカーにもご来店いただきたいため、通勤時にフライヤーを手配りしています。当面はSNSも活用しながら、周辺にお住まいの方を中心としたエリアプロモーションを行っていきたいです」。

スマートフォン中心ではなく体験サービスを楽しんでほしい

今後、「DRIVE TO GO BY TOYOTA」を全国展開するかは未定だが、利用状況や活用意向を見て、エリアを広げていく可能性があるという。

「若年層の生活はスマートフォンを中心に動いていますが、それだけではないことを体験してもらえたらと思っています。『DRIVE TO GO BY TOYOTA』に来るとコミュニケーションが広がることを知っていただき、ここで体験できるサービスは楽しいと感じていただけるとうれしいですね」。

今回の取り組みは、まだ始まったばかりだ。クルマを通した体験や経験をきっかけに、ミレニアル世代である若年層の自動車利用が増えるか注目したい。

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