パブコメにも生成AIの波? 仙台市宿泊税では全体の2割か 職員「除外はできない…」

 仙台市が2~3月に実施した独自課税の宿泊税案に対するパブリックコメント(意見公募)で、生成AI(人工知能)を利用したとみられる意見が多数見つかった。全420件のうち生成AIを使った特徴がみられたのは80件程度、約2割に上る。市の担当者は「『AIっぽいから』では除外できない。大変だが、一つ一つ読み込むしかない」と半ば諦め顔を見せる。(せんだい情報部・佐藤理史)

同じような文体や表現 個人的体験の言及は少なく

 「宿泊税の導入が観光業界に与える影響は多岐にわたります。以下では、その主な影響について詳しく述べます」

 「観光地や観光業界にとって重要な懸念事項であり、政策立案者や関係者が慎重に検討すべき課題です」

 パブコメに寄せられた意見のうち、生成AIで作られたとみられる主な文章だ。同じような文体や表現が繰り返され、個人的な体験や感情、具体的な地名への言及が少ないのが特徴とされる。

 宿泊税の導入に反対する理由として「訪問者数の減少」「雇用への影響」などが箇条書きで示される形式も目立った。

 生成AIの特徴が見て取れる意見のほぼ全てが税導入に反対で、投稿は特定の時間帯に集中。3月24日の午後1~2時台に28件、同28日の午後3~4時台には21件が届いた。

 市の担当者は「パブコメは住民投票のように賛否を多数決で決めるものではない。分量よりも、建設的な提案や切実な声を寄せてほしい」と訴える。

「他意見と同様の扱いを」学習院大院教授の常岡孝好氏

 仙台市の宿泊税案へのパブコメに、生成AIを利用したとみられる意見が一定数寄せられた。学習院大大学院法学研究科の常岡孝好教授(行政法)は「生成AIを用いた意見の提出が増える流れを止めることは困難」との認識を示した上で「市当局はAIだからと特別視することなく、他の意見と同様に扱うべきだ」と提言する。

 宿泊税案に関する全ての意見に目を通した常岡氏は「分かりやすい文章を作るのが苦手な人にとって、生成AIはありがたい道具であり、それなりに筋の通った意見は多い」としつつ「地域に焦点が合っていない意見もあり、生成AIの限界も感じた」と印象を語る。

 常岡氏は生成AIで作った意見を提出すること自体は問題視しない。「これまでも他者との相談や専門書に基づく意見はあった。たまたま頼った相手がAIだっただけ」と指摘する。

 賛否が一方に偏る意見が大量に生成される恐れについても「従来から組織票とも言うべき例は結構ある」と冷静に受け止める。全ての意見を分け隔てなく慎重に検討し、最終案づくりに生かす姿勢が重要だとして「この点こそ、公務員の専門性が試される」と強調する。

 行政も今後、市民意見の整理や要約に生成AIを活用し始める可能性がある。「AIの判断に決定的な影響力を認めるのではなく、あくまでも市当局と市議会が透明で公正な手続きを通し、最終決定する必要がある」と念を押す。

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