ランキングはあてにならない…その街は本当に便利か? 不動産屋に聞く「住んではいけない街」の特徴

不動産・賃貸情報サイトやデベロッパーなどが発表している「住みたい街ランキング」。交通や買い物の利便性、病院や公共施設の充実度などのデータを独自に集計したものから、単純に一般からのアンケートをまとめたものなど様々なランキングがあり、引っ越しを考えている人が参考にするだけでなく、いま自分の住んでいる街が何位に入っているのかを気にする人などからも注目を集めている。

 とはいえ、人気が高くて住みやすそうに見えても、実際に暮らしてみたらいろいろと問題があったということも多い。そんな「住んではいけない街」の特徴を専門家が解説、気をつけるべきポイントについて聞いてみた。

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 ひとくちに「住んではいけない街」といっても、そこに住む人の属性によって、条件は大きく違ってくる。単身者と家族でも変わるし、利便性の受け取り方も人によって様々だ。

「最初に結論を言ってしまえば、いろいろな要素のなかで、その人にとって何がいちばん『イヤ』なのかが、『住んではいけない』に大きく関わってくると思います。どの街にも一長一短があり、完全に整っているエリアなど無いですから」

 そう話すのは、宅地建物取引士の資格を持ち、数々の不動産仲介や売買の実績を持つ、行政書士の中村のぶき氏だ。

「住んではいけない街」を見極めるには、「住みたい街」の要素を逆にした、買い物や交通の「不便性」、災害時の「心配度」、そして犯罪発生率や、周辺の「治安の悪さ」などが挙げられるのではないか。

通勤圏エリアで気をつけるべきこと

「前提として、都心部への通勤圏エリアでいえば、ここ数年で再開発が進んだり、居住者層が変わってきている。なので、いままでのイメージに囚われない目線で改めて街を観てみるというのが大事だと思います」(中村氏・以下同)

 交通の利便性にしても、コロナ禍以降、時刻表が変わって終電が早まったり、相互乗り入れ化で乗り換え不要になるなど、常にマイナーチェンジしている。また、バス路線なども頻繁に変化しているので、現状の路線図を見ただけで判断しないほうがいいという。

「あと駅はちゃんと現地に行って、使い心地を体感・評価したほうがいいですね。地下鉄の駅が深くて、地上からホームまで辿り着くのに時間がかかるとか、乗客数に対して駅のホームが狭くてラッシュ時には人が溢れかえってしまうとか、あまりオモテに出てこない細かい部分が、毎日の通勤ではストレスになりますから。

 ほかには駅の北口と南口の自由通路が少なくて、行き来が面倒とかもイヤになりますよね。交通関係は乗ってからのアクセスだけではなく駅の構造や、その周辺まで考えたほうがいいですね」

 駅のバリアフリー化などは郊外でも進んでいるが、改札から離れた場所にしかエレベーターが設置されていなかったりすると、幼い子どもを育てている家族にとっては不便だ。

「逆にニューファミリーが多いエリアだと、あらゆる場所で『ベビーカー渋滞』が起きるので、単身者にとってはなにかとイラついてしまうかもしれません。立派な駅ビルがあっても、いつも夜遅くまで働いているので利用するタイミングがないとか、自分のライフスタイルに合わない施設ばかりあるようなエリアは『住んではいけない』といえるでしょう」

災害の危険度が継承されない、新興住宅地

 そして、住んではいけない条件として大事なのが災害時のリスクの有無。賃貸はもちろん、マンションや一軒家の購入などを考えている場合は、特に重要視するべき項目だ。

「近年は都心部でも地震や大雨などが頻発しており、河川が溢れてタワマンが浸水したり、地面が液状化するなどの被害が出ました。よく言われることですが、過去に大きな災害があって、その記憶が地名に残っているような場所は危険ですね。

 具体的には『水』に関係する漢字などが使われている地名ですが、新興住宅地で新たな住民が多く移り住んできたようなエリアだと、その危険度が継承されず、土地勘もないので災害発生時にパニックになってしまうんです」

 災害そのものの発生を防ぐことはできない。肝心なのは住民たちが常にそれを意識しているかどうかだ。

「消防団の活動などが活発な地域はいいと思うのですが、高齢化が進んでいたり、住民同士の横のつながりが薄いと、いざという時に大きな被害が出てしまう。都会的な、隣人との関わりが薄い地域も悪くないですが、防災に関してだけいえば『住んではいけない』といえるかもしれません」

気になる「治安の良さ」は何でわかる?

 その他に、街の治安の良さも重要になってくる。誰もが荒んだ街には住みたくないだろう。以前は、駅前にタバコのポイ捨てや放置ゴミが散乱していたり、捨て看板や張り紙、そして放置自転車が多かったりすることが治安の良し悪しの尺度として知られていたが……。

「放置自転車のカゴに空き缶が詰め込まれていたりすると、『あぁ』という気持ちになりますよね(笑)。ただ、近年はどの自治体もこうした問題に取り組んでおり、駅前の再開発と共に違法駐輪の撤去を徹底したり、新たに駐輪場や喫煙所を設置するなどして、見違えるほどキレイになった所が増えています」

 荒んでいるかどうかの指標として、警視庁から市区町村別の「犯罪発生件数」は発表されているが、それだけだとどの駅の、どのあたりが危険なのかまではわからない。

「やはり、歓楽街のあるエリアはトラブルが多くなりがちです。が、基本的に住宅街で、駅前にちょっと飲食街があるという程度だったら、それほど気にすることはないでしょう。

 例えば『街に暴力団の事務所がある』といわれたら住みたくなくなりますが、昔からある団体などは、地元と線引きができていることが多く、事件も少ないと聞きます。逆にトラブルになりうるのは、いわゆる『半グレ』ですね。夜、商店街などにいきなりできた飲み屋が違法なキャッチを行っているとしたら、運営しているのはこのようなグループの可能性が高いので、トラブルが起きやすいかもしれません」

 仕事が終わってやっと駅に辿り着き、帰宅する間にしつこい客引きに声をかけられるのがストレスに感じる人なら、こういった街には住んではいけない。

タワマンが林立する下町エリアの「弱点」

 物件を内見するときは、日当たりなどを確認するために時間をずらして2回行くべき、と言われる。同様に、穏やかそうな商店街でも昼と夜で雰囲気が一変することはあるので、何度か通って確認しておいたほうがよさそうだ。

 また、意外に要注意なのは下町エリアなのにタワマンが乱立しているような、「シン新興住宅地」だという。

「例えば、駅の北口方面にはタワマンが立ち並び、オシャレな雑貨屋やパン屋さんなどが出店している。でも南口には昔ながらの商店街が健在で小さな飲み屋などが多くあり、在住歴の長い方々が暮らしている。こういうエリアは、タワマンで入居してきた新興と、昔から住んでいる層が、世代的にも消費志向的にも交わらない。

 その境界線を越えた場所にうっかり住んでしまうと、お互いに『住みにくい』というクレームが出てきます」

 利便性や物価なども大事だが、その街に住んでみて、いちばんストレスになる確率が高いのは、やはり「隣人」のようだ。

「いろいろな地域の、様々な不動産の仲介をしてきた経験から言うと、『隣人がうるさい』とか、細かいクレームをつけてくる方が住んでいるのは、相対的に安価な物件です。家賃相場の高いエリアに住んでいる方からは、理不尽なクレームを聞きません。言い方は悪いですが、ある程度の家賃を払うことで、隣人トラブルは回避できると思います」

 こうして要素を挙げてみると、「住みやすさ」の指標として重要なのは、利便性などではなく、その地域と自分との相性のようだ。街に罪はない。周りを見回して違和感を感じたら「住んではいけない」のかもしれない。

(清談社)

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