福島県国見町や宮城県亘理町で官民連携事業を担った備蓄食品製造のワンテーブル(多賀城市)の島田昌幸社長は23日、同社のホームページで、社長を辞任する意向を明らかにした。官民連携事業の狙いについて「行政機能をぶん取る」などと述べたことを伝えた河北新報社の報道を受け、責任を取るとしている。
自身の発言と認める
島田氏は一連の発言を自身の発言と認め「行政運営や地方議会を軽視する発言が含まれており、きわめて不適切なものでした」と謝罪し、代表取締役社長の職を退くとした。
ワンテーブルは備蓄ゼリーの製造販売の他に官民連携事業を主要事業に位置付け国見町や亘理町、岡山県西粟倉村といった自治体と協定を結ぶなどして関連事業を受託した=図=。
河北新報社は島田氏が昨年、社外の関係者に官民連携事業について語った録音データを入手。島田氏は国見町と西粟倉村を念頭に「一歩踏み込めるエリアが2地域だけある。本当に制圧できる所」と紹介。ワンテーブルを「第2役場」と称し「(行政機能を)ちょっとずつ侵食して、機能そのものをぶん取る」などと話した。
過疎自治体に照準か<音声データあり>
総務省によると、島田氏は2010年度、同省の地域力創造アドバイザーに登録された。島田氏はアドバイザーの肩書を使い自治体との関係を深めたことも、録音データから判明した。
地域力創造アドバイザーについて、島田氏は「『ワンテーブルの島田』ではなく『総務省の島田先生』になるのがミソ」と発言。関与した自治体に2年程度の「仕込み」をして提案事業を具体化させるとし「予算化の時に(総務省派遣の)島田先生はワンテーブルの島田になる」と語っていた。
関係者によると、ワンテーブルは過疎の小規模自治体の行政機能を肩代わりするビジネスモデルを試行していたという。
官民連携事業のうち、東日本大震災で被災した亘理町荒浜地区の活性化事業「ワタリ・トリプルC・プロジェクト」は主要個別事業が進まず、町とワンテーブルが協定の解約で合意。同社が事務局を務める国見町の「官民共創コンソーシアム」事業も、町が協定を解消する方針を固めた。
ワンテーブルが国見町に提案した高規格救急車計12台の導入事業を巡っては、町が委託業者の選定に使う仕様書の作成に、事業を受託した同社を関与させていたことが判明。町の事業者選定が官製談合防止法などに触れる可能性がある。