仙台の「防災マンション」、認定伸び悩む コロナで住民活動停滞、防災意識低下も

マンションの防災力向上を目的に、仙台市が東日本大震災後の2013年度に導入した「杜の都 防災力向上マンション認定制度」の新規認定件数が伸び悩んでいる。新型コロナウイルス禍による住民活動の停滞や防災意識の低下が背景にあるとみられる。一方、首都直下型地震が想定される首都圏の自治体では、防災訓練への助成などインセンティブ(動機付け)を設けて導入を働きかけている。(報道部・亀山貴裕)

わずか3件

 制度は、震災でマンション住民が水や食料の確保に苦労したり、エレベーターが停止したりしたことを受けて仙台市が導入。15年度には導入を推進するため、認定後でも基準の達成度に応じて(マンションの防災力の)評価を上げられるよう制度を変更した。

 認定件数の推移はグラフの通り。16年度に30件に達したが、17年度から下落。コロナの感染が拡大した20、21年度にはわずか3件となった。市の担当者は「コロナの影響で住民同士が集まりにくくなり、制度を周知する機会も限られてしまった」と説明する。

 防災への関心低下は数字からも見て取れる。NPO法人東北マンション管理組合連合会(仙台市)は、防災マニュアル作成支援のための専門家派遣事業を市から受託する。実施件数は15年度と16年度が30件前後だったが、17年度に6件となって以降は1桁台が続いている。

 連合会の白畑洋会長は「マニュアル作成には1、2年かかる。多様な考えを持つ人が集まるマンションの住民が、同じ方向に進んでいくのは大変な作業だ」と話す。

インセンティブ奏功

 市の認定制度は、地域との連携などソフト面を評価する先駆的な取り組みとして、他都市のモデルになってきた。集合住宅の居住者割合の高い東京都では、防災訓練経費の一部助成(中央区)や防災資機材の購入経費の補助(墨田区)などインセンティブを設けている。

 横浜市が今年2月に始めた認定制度は、地域と共用の防災倉庫を整備するなど基準を満たしたマンションの容積率を緩和する。

 市の担当者は「市民の6割がマンションに暮らす。水害や地震に備えて住民や企業の努力を後押しする必要がある」と説明する。

 仙台市は認定物件をホームページで紹介するが、後発の自治体のようなインセンティブはない。市住宅政策課の村上渉課長は「町内会をつくるなどすれば受けられる支援制度はある。増加する自然災害への防災意識を高めてもらえるよう、地道に啓発と認定支援を続けていく」と話す。

[杜の都 防災力向上マンション認定制度]防災備蓄倉庫や耐震ドアの設置など「防災性能」か、自主防災組織の結成や防災訓練の実施など「防災活動」で基準を満たしたマンションを仙台市が認定し、防災力を6段階で評価する。対象は市内の分譲マンション。市は認定マンションに認定証を交付し、ホームページで紹介する。2022年3月時点で青葉区を中心に57棟で計79件が認定を受けている。

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