砂浜を歩くとキュッキュッと音がする鳴り砂を研究し魅力を発信する市民グループ「仙台湾鳴り砂探究会」が、5月に病気で亡くなった早川紘之(ひろゆき)代表(享年84)の後継を探している。早川代表は調査を一手に担い、20年以上にわたり採取した鳴り砂や、分布図などをまとめた報告書が仙台市若林区の自宅に残る。会員の長沢香さん(49)と吉川理香さん(50)は「東日本大震災前の砂や、世界の砂もある。『早川コレクション』とも言える貴重な資料。保存活用してくれる施設や、研究を引き継ぎたい方は手を挙げてほしい」と語る。
[鳴り砂] 鳴き砂とも呼ぶ。石英の割合が高い砂ほど鳴るとされるが、音のメカニズムは未解明。汚れると鳴らないことから「環境のバロメーター」とされる。鳴り砂の浜は全国に30以上あり、宮城県内では国の天然記念物に指定された気仙沼市の十八鳴(くぐなり)浜、九九鳴き浜など7カ所が確認されている。
宮城・福島の50カ所調査、国内最大級の鳴り砂も話題に
早川さんは、会社員時代に福島県いわき市で鳴り砂に魅せられ、定年退職した2003年に1人で探究会を立ち上げた。宮城県の牡鹿半島から福島県相馬市まで仙台湾50カ所の砂浜を歩いて調査。05年には亘理町の鳥の海と吉田浜海岸で初めて鳴り砂を確認し、全長3・5キロにも及ぶ吉田浜海岸は国内最大級の規模と話題になった。
震災で鳴り砂一変も次第に戻る 生前の早川さん「自然の回復力はすごい」
11年の震災で鳴り砂の浜も一変した。津波や地盤沈下により縮小、泥やがれきで鳴り砂は音を失った。早川さんは失望したが、2カ月後の5月には調査を始めた。次第に各地の砂浜が回復しだし、鳴り砂が音を取り戻しつつある様子を確認した。「『自然の回復力はすごい。神様は見捨ててないね』と夫は声を弾ませていた」と妻のとよ子さん(83)は振り返る。
海岸清掃も積極的に参加し、鳴り砂の保全とPRに尽力した早川さん。コロナ禍が収まり、体験会やツアーを再開させたばかりの訃報だった。長沢さんらはぴんと背筋を伸ばし砂浜を歩いていた姿をしのび、「子どもたちが環境問題に目を向けるきっかけに鳴り砂のコレクションを活用してもらえたら、代表もきっと喜んでくれる」と話す。
会の連絡先はs.narisuna.t2003@gmail.com(編集委員・佐々木浩明)