SNSマーケティングでは、もはやメインの媒体となりつつある「Instagram」。日々、機能も追加されており、どんどんその活用の幅も広がっている。そうした中、ECを展開している企業は、こぞって口コミSNSを活用していることがアンケートで分かった。口コミと言えば、Instagramが得意とする分野でもある。
今回は、Instagramを中心にSNSマーケティング支援を行う株式会社パスチャーのプロにInstagramを活用しながら自社や商品のファンを作る方法を聞いた、
約6割が自社ECで口コミSNSに注力
フューチャーショップが2021年12月、事業者を対象に実施したアンケート調査では、ちょうど6割の事業者が、2022年は2021年よりも「EC売上が伸びる」と予測していることが判明した。コロナ発生から3年目となる2022年も、EC売上が増加・維持されると予測している。
そして、現在自社ECで注力している施策について聞いたところ、断トツ1位は「Instagramなど口コミSNSを活用したファン化」で61.20%にも上った。
ECに取り組む事業者は、今年はさらにSNSを中心に活動の幅を広げ、消費者とコミュニケーションを積極的に取っていこうとしている姿勢があることが分かる。
そこで今回はニーズの多いInstagramの運用術に迫ってみる。パスチャーSaaS事業部 アカウントエグゼクティブであり、Instagram運用に詳しい吉岡采音氏に話を聞いた。
【取材協力】
吉岡 采音氏
Instagramを中心にSNSマーケティング支援を行う株式会社パスチャーにて、Instagram運用支援ツール「MASAI(マサイ)」の拡販を担当。MASAIは企業アカウントにおける改善ポイントの発見や運用業務効率化に役立つツールとして、代理店、事業会社問わず幅広い企業様に導入いただいています。https://mas.ai
運用者が知っておきたいInstagramのトレンド情報
まずはInstagramの運用に役立つトレンド情報を聞いた。
1.キーワード検索機能による「インスタSEO」の広がり
「Googleのように単語で検索できる『キーワード検索』機能がつきました。これにより、従来のように『ハッシュタグを最適化』することよりも、キーワードを簡潔に検索対象の箇所に入れ込むことが重要になりつつあります。InstagramもSEO対策と同様の考え方が必要な部分が出てきます」
2.リンクスタンプ機能による、エンゲージメント強化の必要性の高まり
「フォロワーが1万人以下のアカウントでも、ストーリーズに外部リンクを貼ることができるようになりました。これにより、以前よりも一層『フォロワー数』は重視されづらくなり、『エンゲージメントの高さ』を意識した運用が重要になってきます。
結果として、どのアカウントもユーザーとの積極的なコミュニケーションを取ることがInstagramを成長させる大きなポイントとなります。今後はユーザー側からのいいね!やコメント、保存、ダイレクトメール、ストーリーズへの反応などをより多くもらえるようなユーザーとの距離が近いアカウントが、成果につながりやすいのではないかと考えます」
3.動画利用時間の増加
「Instagramに限らず、他のSNSでも動画機能への注力度合いが高まってきており、ユーザーの動画閲覧時間もますます増加しています。Instagramも方針として、動画機能の強化を打ち出しており、今後、その流れはさらに加速すると思われます。
一方で、音楽を選ぶと自動でリール画像が作成される機能など、投稿者を補助するようなものも整備され始めています」
Instagram運用のよくある失敗パターン
ぜひ今年は、トレンドに合わせた運用を心がけたい。とはいえ、日々の運用時に「うまくいかない…」と感じることもあるだろう。そこでInstagram運用で陥りがちな失敗パターンと対処法を教えてもらった。
1.フォロワー数のみをKPIにしていた結果、フォロワー数は増えても売り上げなどの成果につながらない
「フォロワー数も重要な指標ではありますが、それだけを目標として施策を立ててしまうと、例えば『プレゼントキャンペーンを多く打ち出して、フォロワー数の増加を図ろう』などといった施策に行きつきがちです。その結果、フォロワーは増え、一見、アカウント運用は順調そうに思えるのですが、振り返ると実は成果と呼べるものがなかったといったケースが多いです。プレゼントキャンペーンも、ターゲットとなり得る層が反応するような形で行い、キャンペーン前後の投稿スケジュールなども配慮すれば、潜在層のフォロワーを獲得することができるでしょう」
2.施策を行っても売上増加は直後のみで、継続的な効果が出ない
「予算を注ぎ込んでインフルエンサー施策やPR施策などを行っても、『売り上げが増えるのはその施策の実施時だけ。公式アカウントのフォローにはつながらず、継続的な成果にはつながらなかった』というケースがあります。原因として、プロフィールやアカウント全体の整備を行わずに施策を行ってしまったことなどが挙げられます。せっかくアカウントを見に来たユーザーに、当該アカウントをフォローする価値やサービスの良さが伝わりづらく、『フォローする価値がない』と思われてしまったためです。Instagram運用を行う際はアカウントの見た目を整備し、ある程度継続的な投稿を行っておくことがすべての基本になります」
3.投稿がマンネリ化してしまい、数字も伸びない
「投稿作成に多くの時間を費やしているものの、なかなか指標が伸びない、というパターンは非常に多く見られます。ここ1年ほどはInstagramの利用者数・アカウント数の増加や利用スタイルの変化に伴い、フォロワー数、いいね!数などを伸ばすことが特にむずかしくなってきています。ただ同じような投稿を継続しているだけでは、アカウントは成長しません。数字を伸ばすためには、Instagramのアルゴリズムを意識しつつさまざまな投稿パターンを試し、『何がよかったのか』『ユーザーは何を求めているのか』を読み取っていくことが必要です」
Instagramでファン作りを行うためのポイント
そしてSNSはファンを作るのに適したメディアともいわれる。Instagramで自社や自社ブランドのファンを作るにはどうすればいいだろうか。吉岡氏は次の4つを挙げる。
1.ユーザーとのコミュニケーションを図る
「あらゆる部分でユーザーとのコミュニケーションを図ってください。Instagramは、ユーザーと相互のやりとりをした回数や関係の綿密さを様々な観点で計測し、その結果で投稿の表示順や、投稿の拡散性が変わる仕組みになっています。具体的には、ついたコメントに反応する、ダイレクトメールを開放して返信の対応をする、インスタライブを実施しコメントを集める、ストーリーズの質問箱や投票機能を活用する、などが挙げられます。それらを行うことにより、ユーザー心理としてアカウントへの親近感が上がることから効果が出やすくなると同時に、Instagramのアルゴリズムとしても、シグナルがたまることでアカウントの信頼度が上がり、より拡散されやすいアカウントを作り出すことができます」
2.ユーザーの検討段階に合わせたバリエーションのある投稿を行う
「ユーザーの検討段階に合わせた、バリエーションのある投稿を行ってください。Instagramのユーザーには、サービスの名前も知らない方や、購入を検討している方など、様々な段階の方がいます。購入を検討している顕在層が多くいるのに、認知拡大を想定したノウハウ系コンテンツばかりを打ち出していても、『購入検討』から『購入』の段階には進んでいきません。その場合、例えば製品に関するQ&Aのような、段階を引き上げる内容を打ち出すこともときには必要です。ただし、すべてをフィード投稿でまかなう必要はなく、フィード投稿は潜在層向け、ストーリーズやインスタライブは顕在層向け、という形で使い分けるのも一つの方法です」
3.ユーザーが知りたいことを発信する
「『自分が発信したいことを発信する』ではなく『ユーザーが知りたいことを発信する』ということを念頭に置いた運用を心がけてください。個人で運用する場合は『自分が発信したいことを発信する』でも良いのですが、企業アカウントの場合は、闇雲に商品紹介を行っても効果が出る可能性は低いです。ユーザーは今やInstagramを検索ツールとして利用しています。自分の商材と関連した分野で、よりユーザーの“ため”になる情報を発信していくことが、ファン化の第一歩につながります。もちろん、ある程度、既存のファンが多いサービスのアカウントについては、商品紹介を行うことは有効です」
4.投稿の振り返りを怠らない
「3と関連しますが、ユーザーが知りたいことや好みは常に変化するため、投稿の振り返りを怠らないようにしましょう。ユーザーの興味関心はいいね!数、コメント数、保存数、プロフィールビュー数、リンククリック数、フォロワー数などに現れてきます。どのような投稿をするとユーザーからの反応が良いのか、反応の良い投稿の共通項はどこにあるのかを考え、より投稿の方向性をそこに合わせていくようにしましょう。
振り返りには、InstagramアプリやPC端末で確認できる『Instagramインサイト』や、Instagramの分析ツールなどを利用すると良いでしょう。当社が独自開発している『MASAI』では、あらゆる観点からInstagramのデータを捉え、効率的に分析改善を行うことができます」
Instagramでファン作りを行うためのベースとなる考え方
最後に、Instagramでファン化を行うためのベースとなる考え方を聞いた。
「『商品を売りたいんだ!』という思いだけで投稿しない、ということが非常に重要です。
企業のアカウント担当者になると忘れてしまいがちなことですが、InstagramはあくまでSNSの一つであり、ユーザーはInstagramを楽しんでいます。様々あるユーザー行動の一つがサービスの認知であり、購入や利用なのです。Instagramはユーザーにとって無償で利用でき、商品やサービスをあらゆる面で伝えることのできる便利なツールではありますが、『商品やサービスを認知する・買う』ためだけに利用しているのではないということをまずは意識したほうがいいでしょう。
Instagramは、ユーザーとのコミュニケーションが取れていて、ユーザーから信頼されているアカウントが優遇される仕組みになっています。まずは、すでに自分のアカウントをフォローしてくれているユーザーや、すでに名前を知っている方のことを考え、そのユーザーにとって、自社アカウントがどのような存在になっていれば嬉しいのか、ということを、一度考えてみることをおすすめします」
このところ、ますます増加しているというInstagramユーザー。企業の利用も増えていくだろう。そうした中、今回紹介されたポイントを踏まえて運用することで、自社らしい運用が叶い、ファン化につながっていくのではないだろうか。
【調査出典】
フューチャーショップ「EC活用の実態とアフターコロナの展望についてのアンケート」調査