何らかの事情で会社を退職したら、勤続年数などに応じて退職金を受け取れる場合があります。ただし、会社員であれば全員が退職金を受け取れるわけではありません。 そもそも、退職金の支給は法律で定められた義務ではなく、企業が人材の確保などを目的として独自に設けているものです。 ここでは、退職金が出ない会社は日本にどれくらいあるのかを解説します。
退職金制度がない企業は全体の約2割
りそな年金研究所が2021年に発行した企業年金ノートによれば、2020年の調査で退職給付制度を実施している中小企業は65.9%です。
退職給付制度を設けていない中小企業は20.9%、残りの13.2%は無回答という結果となっています。つまり、少なくとも5社に1社の割合で、中小企業に勤める会社員は退職金を受け取れないということです。
一方、厚生労働省「平成30年就労条件統合調査」によれば、従業員人数が1000人を超える大企業の場合、退職給付制度がある企業は92.3%、300~999人の企業でも91.8%と、会社の規模が大きいほど退職金制度が充実していることが分かります。
全体では、退職給付制度を導入している企業は80.5%に上り、逆に退職金を受け取れない企業は約2割となっています。
退職金の額は減っている
退職金を受け取れる企業でも、その支給額は年々縮小しています。
退職給付制度を実施している企業の内、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業を対象にした調査では、平成25年(2013年)のデータで大卒・大学院卒の定年退職時の退職金は平均で1941万円でした。
ところが、平成30年(2018年)には、同じ条件での退職金の平均は1788万円です。つまり、この5年で150万円以上も退職金の額が減っていることになります。
特に高卒の場合は、受け取る退職金額の縮小がより顕著です。現業職以外の高校卒の人材が、定年退職時に受け取る退職金額の平均は、平成25年時に1673万円あったものが、平成30年には1396万円に減っています。この5年の間に実に300万円近く縮小しているのです。
退職金は老後の資産形成に大きく寄与する財源ではありますが、今後も縮小していくことが予想される中では、退職金に頼った資産形成は見直したほうがよいのかもしれません。
制度がある会社でも退職金を受け取れない場合がある
全体の8割の会社に退職給付制度があるので、大部分の会社員は退職金を受け取れる計算になります。
ただ、退職金制度を実施している会社に勤めていても、確実に退職金を受け取れるわけではありません。
退職金制度は法律上の義務ではなく、会社が独自に規定を作って運営している制度です。そのため、会社によって支給条件も異なり、その支給条件を満たしていない場合は、退職金制度を実施している会社に勤めていても退職金を受け取ることはできません。
退職金を受け取る条件として多いのが、勤続年数に関する定めです。最低でも3年以上は勤続し続けなければ、そもそも退職金を受け取る資格を得られないなど、所定の勤続年数を満たしているかどうかを退職金支給の条件としている会社は少なくありません。
また、転職など、自己都合で退職する場合は、勤続年数などの条件を満たしていても受け取れる退職金の額は減ってしまいます。退職時に退職金をしっかり受け取るためには、会社の制度などをしっかり確認しておく必要があるでしょう。
退職金がない会社でもメリットはあるかも
退職金がある会社とない会社なら、前者を選ぶという人が多いのではないでしょうか。
ただ、退職金がなくても、その分を毎月の給与に上乗せしてくれたり、ボーナスを拡充してくれたりするなら、退職金のない会社の方が、むしろ得られる利益が多くなる場合があるかもしれません。
退職金がないからダメというのではなく、いろいろな要素を複合的な視点から見ることが、その会社を正しく評価するのに必要な姿勢だといえるでしょう。