一度は停滞していた「プレミアムフライデー」が復活するかもしれない。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5月8日から「5類」に移行したことを受け、企業がさまざまなキャンペーンを打ち出そうとしている。 【画像】各社のキャンペーン(全10枚)
串カツ田中はキャンペーンを復活
居酒屋チェーン「串カツ田中」は5月12日、プレミアムフライデー復活のキャンペーンを実施する。特に人気の高い「串カツ豚」「串カツ牛」(170円)を、この日に限り通常サイズの2倍で提供する。また、「定番5本盛り」といった盛り合わせメニューに入っている串カツ豚と串カツ牛も2倍のサイズにする。 さらに、第2弾のキャンペーンを5月22~28日に実施する。この期間中は、通常だと1杯490円以下のドリンクを250円で提供する。 串カツ田中は2017年からプレミアムフライデーのキャンペーンに取り組んできた。通常店舗の開店時間は午後4~5時だったが、キャンペーンの日だけは午後3時に早めることで、職場からいつもより早く帰宅する人に訴求してきた。広報担当者によると、串カツを税別100円で提供し、集客にも役立っていたという。だが、コロナ禍の影響で20年11月以降は休止していた。 感染症法上の位置付けが変更されたことで外食のニーズが高まると判断し、キャンペーン再開を決めたという。
ミニストップはアプリ企画
コンビニチェーン「ミニストップ」も、5月19日からプレミアムフライデーのキャンペーンを復活させる。 同社の提供するミニストップアプリを使用した企画で、毎週金曜日に対象のおにぎりが30円引きとなるクーポンを提供する。また、毎週の金曜日、土曜日、日曜日に対象のソフトクリームや独自スイーツ「ハロハロ」が50円引きになるクーポンを発行する。広報担当者は「お客さまがプレミアムに感じるようなアプリ企画を実行することで来店増加を促したいという狙いだ」と説明する。 ミニストップは過去にプレミアムフライデーの企画をいくつか実施していた。例えば、通常は200円のアイスカフェラテを100円にしたり、全てのレシートにパフェが50円引きとなるクーポンをつけたりといった具合だ。その中でも、フライドポテトが3個分入って価格が2個分という「バケツポテト」が特に人気だったという。
三陽商会はバーをアピール
三陽商会が展開する「ポール・スチュアート」は、衣料品や雑貨を扱う「Paul Stuart青山店」(東京都港区)にて、プレミアムフライデーの企画を、5月12日、19日、26日に実施する。 Paul Stuart青山本店は20年11月にオープンした。20年と21年は店舗でのイベントを控えていたが、22年からはバイオリンリサイタルなどを定期的に実施してきた。広報担当者によるとプレミアムフライデーのイベントを実施するのは今回が初だという。 PaulStuart青山本店内にあるバー「The Copper Room」で、プレミアム感のあるスペシャルモヒートを毎週金曜日に提供する。このカクテルは、東京の銀座や六本木で会員制バーを運営するオーナーが発案したもので、同店舗でしか味わえないという。26日にはジャズイベントも予定している。 感染が拡大している時期にオープンした店舗のため、店舗内にバーがあることを知らない人が多かった。そこで、イベントを通してバーの認知拡大を図る。コロナ禍でも来店してくれた顧客や近隣住民をターゲットとしており、毎週金曜日に店舗に足を運ぶと特別な体験ができることをアピールするのも目的だ。
百貨店もイベントを実施
このように、さまざまな企業がコロナ後の集客を目的にイベントを実施する。 ここまでで紹介した例以外では、三越伊勢丹が伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、銀座三越を中心に各店で12日、19日、26日にイベントなどを実施する。 高島屋も日本橋店や新宿店などで12日、19日、26日にイベントなどを実施する。同社は「かつての日常への回帰や、お出かけ需要の高まりを意識した、新たな『プレミアムフライデー』を提案していく」としている。
経産省も期待
プレミアムフライデーは、経産省や経団連が旗振り役となり17年2月にスタートした。月末の金曜日、午後3時を目途に退社を促すことで、働き方改革を後押しする狙いがあった。 時間の余裕を生み出すことで消費を喚起し、デフレ的傾向を変えるきっかけにすることも期待していた。経産省の公式Webサイトでは、「世の中では『安いこと』が強く求められ、商品・サービスの低価格競争が展開されています。質よりも低価格が優先されるなかで、良質な商品・サービスから得られる『幸せ』や『豊かさ』を実感する機会が失われつつあるのです」と問題提起している。また、給料日の後の月末金曜日には平均消費額が高くなる傾向がみられることから、プレミアムフライデーを実施することで、価値のある商品やサービスに対して適切な対価が支払われ、デフレ的傾向を変えるきっかけにしたいとしていた。 では、実際に早期退社をした人はどの程度いたのか。17年2月~18年1月に、経産省が全国47都道府県の20~59歳の働く男女約2000人を対象に実施した調査データがある。それによると、早期退社率は11.2%だった(全12回実施された調査の平均)。経産省が別に公表しているデータでは、17年5月におけるプレミアムフライデーの認知度・理解度は87.8%という結果だったので、知られている割にはそこまで浸透していなかったといえるだろう。 また、後に複数のメディアがプレミアムフライデーを振り返って「消費喚起の面ではほとんど効果はなかった」という専門家の意見や、「キャンペーンを実施したが売り上げは伸びなかった」という居酒屋で働く従業員の声を紹介している。結果的には思ったほどの効果が出ていなかったのが実態だろう。 経産省の担当者に今後の展望を聞くと、「コロナ禍の影響でプレミアムフライデーに関する情報発信を控えてきたが、今後は、積極的に取り組んでいきたい」と意気込みを語った。 外食するシーンが増える中で、プレミアムフライデーは勢いを取り戻せるか。