国際的に最も評価が高い「世界大学ランキング」を毎年発表している英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が、ベネッセグループをパートナーとして、初の日本版ランキングを発表しました。どういう意義があるのでしょうか。

国際順位とは<番狂わせ>も

THEは、全世界に約1万8,000あるとされる大学の約5%に当たる980大学を、教育力や研究力、国際性などの指標によってランク付けしています(評価の対象となるエントリー数は非公表)。最新版には日本から69大学がランクインしており、米国(148大学)、英国(91大学)に次ぐ多さです。このうち東京大学が39位、京都大学が91位、東北大学が201‐250位(同率、以下同じ)、大阪大学と東京工業大学が251‐300位などとなっています。

それに対して日本版は、エントリーした国内430余りの大学(全大学の半数以上)を、総合ランキングと分野別(教育リソース・教育満足度・教育成果・国際性の4分野)で、1位から141‐150位までにランク付けしています。結果として約290大学の名前が、どこかに載っています。

総合ランキングを見ると、東大の1位は揺るぎないものの、国際性で勝る東北大が京大を上回る2位となり、世界ランキングでは301‐350位だった名古屋大学が4位となるなどの<番狂わせ>がありました。世界では601‐800位だった神戸大学が13位、ランクインしていない一橋大学が14位、国際基督教大学が15位など高位に入っているのも特色です。

分野別ランキングでは、「教育満足度」で秋田市にある公立国際教養大学(総合20位)が東大を上回り1位に。「教育成果」では私立金沢工業大学(同68位)が19位につけているのが目を引きます。「国際性」では(1)立命館アジア太平洋大学(同24位)(2)大阪経済法科大学(同ランク外)(3)東京国際大学(同141‐150位)(4)麗澤大学(同101‐110位)(5)上智大学(同18位)などの順です。

偏差値によらない志望校選びに

ところで、なぜ日本版ランキングが必要だったのでしょうか。
世界の大学では、国境を越えて学生や教員・研究者の流動性が増すなかで、研究と教育の両面で競争が激化し、異なる国の大学を同じ指標で評価する必要性が高まっています。ただ、研究面は同じ尺度で測りやすいのに対して、教育面は評価が難しく、実際には「研究大学」でなければ世界ランキングにエントリーさえできないといいます。一方で、グローバル人材やイノベーション(技術革新)人材の育成など、大学の教育機能に対する期待は増すばかりです。

そこで、教育面に実績のある大学が多く、データが豊富な米国で、まず国別ランキングの作成に乗り出しました(昨年9月に結果発表)。同じ条件のそろっている日本に、2番目として白羽の矢が立ったというわけです。

日本版ランキングはTHEのサイトで全世界に発信されますから、世界ランキングに載らない大学も、海外留学生の検討対象に上ることになります。国内の大学志望者にとっては、偏差値によらない大学選びの参考になります。ちゃんと日本語のサイトもありますので、気になる大学を検索してみてはいかがでしょうか。

THE世界大学ランキング 日本版2017 【総合順位】(150位までのうち20位まで抜粋)

※「THE世界大学ランキング日本版」日本語公式サイト
https://japanuniversityrankings.jp/

※THE世界大学ランキング(英文)
https://www.timeshighereducation.com/

(筆者:渡辺敦司)