初売り、戻るにぎわい 東北の百貨店・量販店 売り上げコロナ前超えも

東北の百貨店と量販店が、新型コロナウイルス下で3回目となった今年の初売りの概況をまとめた。各店で売り上げが前年を超え、感染拡大前の2020年の水準を上回る店も出始めた。「ウィズコロナ」の浸透で来店客数が伸び、物価高を背景にお得感のある商品が人気を集めた。(報道部・土屋聡史)

「まずまずの結果」。開店前の行列が前年の3倍以上の約5000人に上った藤崎(仙台市青葉区)の担当者は、3年ぶりの活況を控えめに喜んだ。

 開催スケジュールを昨年の4日間から例年の2日間に戻して集客効率を上げ、2日間分の売り上げ比較では前年を13%上回った。コロナ禍前の2020年比でも9割の水準に迫り、担当者は「人の流れが回復してきた。多様化する顧客ニーズに応えたい」と話す。

駅前に長い列

 3年ぶりに店前で太鼓の演奏を復活させた仙台三越(青葉区)も売り上げが前年比6%増と好調。コロナ禍前の7割の水準だが、担当者は「初売りらしいにぎわいを取り戻せた。いいスタートを切れた」と前向きに捉える。

 JR仙台駅前は、どのファッションビルの前にも長い列ができた。青葉区のエスパル仙台は前年比9%増と伸び、仙台パルコは好調だった前年の数字を維持した。アニメグッズが人気のイービーンズ(青葉区)は前年比20%増、コロナ禍前の20年比でも10%増を記録し、担当者は「現金つかみ取りなどにぎやかな企画が好評だった。滞在時間も延び、明るい兆しがある」と喜んだ。

消費を先食い

 物価高を反映し、値頃感のある商品に人気が集まった。西武秋田店(秋田市)は福袋やセール品といった目玉商品の売り上げが前年比14%増と好成績。ただ、通常価格の商品は伸び悩み、売り上げ全体では前年程度にとどまった。担当者は「昨今の物価上昇の影響が購買行動に少なからず表れている」と分析する。

 同じくリーズナブルな商品の引き合いの強さを指摘したのは、さくら野百貨店(青森市)。歳暮の在庫品をさばく昨年末の「ギフト解体セール」が前年比30%増と大幅に伸びた。初売りは前年並みとなり、消費を先食いした結果だった。担当者は「お客さまの価格に対するアンテナが高くなっている」とみる。

価値観多様化

 各百貨店の担当者によると、初売りを巡っては近年、衣料品メーカーが「福袋」向けの専用商品の生産を減らす傾向にある。コロナ禍による海外工場の生産抑制に加え、持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえた大量廃棄への配慮、ネット販売への商品供給の拡大などがあるとみられる。

 「初売りが新年一発目の重要イベントであることは論をまたないが、消費者の購入ルートや価値観の多様化も進んでいる」と宮城県内の初売り担当者。「店として初売りで得られる効果を検証し、顧客が何を求めているのかを見極める必要がある」と口元を引き締めた。

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