せっせとメールを出しているのに、いつも先方の反応がかんばしくないなら、知らず知らずのうちに「残念なメールを書く人」になってしまっているのかも。
日本のビジネスパーソンが1日に受信する業務メールは、だいたい30通程度。管理職になると50通から80通にのぼるといわれます。
こうした状況の中で、受け手にスキップされ、あるいは後回しにされる、残念なメールが存在します。その具体例を、皆さんと一緒に見ていきましょう。
残 念なビジネスメールの筆頭は、タイトルを読んだだけでは内容がわからないメールです(ダメメール1)。「ごぶさたしています」「先日はありがとうございま した」などの挨拶系、「○○商事の△△です」などの自己紹介系、「セミナーについて」「懇親会の件」などのあいまい系。いずれも、タイトルが迷惑メールと 区別できません。
受信者はタイトルと発信者の名前を見て、読むべきメールを選んでいます。つまり、読んでもらうためには、タイトルだけで内容がある程度伝わる工夫が必要です。
■いつの何の話か、何を求めているか
タイトルの工夫は、2つのステップで考えます。まず日付などを入れて案件を絞り込み、次に目的や相手に期待する行動を明示します。「○月○日メール術セミナーのご案内」といった要領です。
目的や期待する行動をカッコでくくり、「【お誘い】△月△日の懇親会について」などと、タイトルの冒頭に置くのもいいでしょう。【要返答】【○月○日締切厳守】などは、社内メールでは問題ありませんが、社外宛てにはより柔らかい言い回しを選びます。
メー ルの書き方研修などでいつも気になるのは、ほとんどの方が準備なしに、いきなり本文を書き始めることです。用件をあらかじめメモなどで整理せず、記憶に 頼って書くことが習慣になっている。その結果、用件もれや添付ファイル付け忘れが発生し、お詫びメールを送るはめになります(ダメメール2)。
最後にもう一度見直すつもりなのでしょうが、厄介なのは、本文をとりあえず書き終えたときの満足感です。つい見直しを忘れて、送信ボタンを押してしまうんですね。
■記憶に頼って書くからミスする
記憶をたどる作業と、文章化する作業は別にしたほうがいいでしょう。紙でもパソコンの画面上でもかまいませんから、まず用件やキーワードを個条書きでメモ。本文を書くときは、書く作業に集中します。添付ファイルは本文を書く前に付けるようにすれば、ミスを防げます。
先方の社名や個人名を間違えるのは、メールでもたいへん失礼なこと(ダメメール3)。でも、宛先名を手入力していると、ついつい誤表記をしてしまいがちです。
こ うしたミスを防ぐには、記憶に頼らずコピー&ペーストするのがベスト。メールを返信するときは、受信した相手のメールの署名を、初めてメールを出す場合は 相手の会社のウェブサイトにある社名表記を、それぞれコピーして貼り付ける習慣をつけましょう。よくやりとりする相手の場合は、まとめて単語登録してしま うのも手です。
丁寧なつもりでダラダラ長く書き綴ったメールは、メールを書き慣れていない人が陥りがちなパターンです(ダメメール4)。画面で長文を読まされるのは、相手にとって負担。移動中にスマートフォンで読む場合はなおさらです。
社内向けメールはとにかくコンパクトに、社外向けも失礼にならない範囲で極力簡潔に書くことを鉄則にしましょう。これこそ相手の立場に立った思いやりです。
本文は長くても、画面をスクロールせずに読める範囲で。数行ごとに段落分けし、行間を空けるのもいいでしょう。短いメールには短く返信すればいいので、多忙な相手からも返事をもらえる確率が上がるはずです。
■メールだと急に感じが悪くなる人
「よろしくお願いします」は万能の結び文句ですが、メールを受け取った後に何をすればいいのかが明示されていないと、先方は困惑してしまいます(ダメメール5)。
ま ず、「~をお送りします」「~についておうかがいします」など、「自分がこのメールですること」を本文のはじめのほうで明記。それを受ける形で「ご確認の うえお返事いただければ幸いです」「ご教示のほどよろしくお願い申し上げます」など、相手にしてほしいことで本文を結びます。社内向けには敬語でなく、 「確認願います」「関係者に伝達してください」といった「敬体」で十分です。
実際に会って話をしているときは感じのいい人なのに、メールになるとなぜか印象が変わる方がときどきいらっしゃいます(ダメメール6)。
用件を簡潔に伝えることはビジネスメールの基本ですが、たとえば手直しや改善を依頼するようなとき、ストレートなダメ出しの文句だけを並べたのでは、先方にとってきつい文面になってしまいます。
本 文の冒頭で「原案をお送りくださりありがとうございました」などと、相手に感謝する言葉を入れる。「お手数ですが、2点ほど微調整をお願いします」など と、クッション言葉を上手に使う。数字や個条書きで、修正してほしい点を具体的に伝える。同じ改善依頼でも、言葉遣い一つで印象は変わります。「至急」を あまり多用するのも、感じが悪くなります。
自分の都合だけで書かず、受けとる側の立場でも考える。ダメメールからの脱却は、そこから始まります。
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鈴木真理子(すずき・まりこ)
損保大手の人事部や総務を経て独立。企業研修や公開セミナーで、これまでに3万人以上のビジネスパーソンを指導。著書に『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』など。
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(ヴィタミンM代表 鈴木真理子 構成=川口昌人)