日本の製薬会社による新型コロナウイルスワクチン開発が急ピッチで進んでいる。現在国内で認可されているのは海外メーカーによるものだけ。国内を中心に臨床試験(治験)が進む「国産ワクチン」への関心は高く、早期の実用化を期待する声がある。主な企業の開発状況と見通しをまとめた。(編集局コンテンツセンター・佐藤琢磨)
国事業に5社採択
独自のワクチンを開発中で、国のワクチン生産体制等緊急整備事業に採択されているのは塩野義製薬、アンジェス(以上大阪)、第一三共、VLPセラピューティクス・ジャパン(以上東京)、KMバイオロジクス(熊本)の5社(8月18日現在)。
塩野義製薬が進めているのは、ウイルスの遺伝子情報からワクチンのもととなる物質(抗原タンパク質)を作る組み換えタンパクワクチン。海外ではインフルエンザワクチンなどで既に実用化されている。
現在は3段階あるうち第1/2相(段階)の治験中。同社広報部は「21年度内の提供を目指し、大規模治験の詳細などを規制当局や関係省庁と調整中」という。予定では年間最大6000万人分の生産が可能になる見込みだ。
大阪大発の創薬ベンチャー、アンジェスは「DNAワクチン」と呼ばれる新しいタイプを開発中だ。複製したウイルスのDNAの一部を体内に取り込んで免疫を作る仕組み。治験は国内で最も早い昨年6月に始まった。現在は第2/3相の治験中で他社より先行しているが、供給量や提供時期などは明らかにしていない。
従来型の不活化ワクチンも
第一三共は米ファイザー社、米モデルナ社製と同じm(メッセンジャー)RNAワクチンを東大研究チームと共同開発する。3月から第1/2相の治験が行われており、22年中の供給開始を目指している。生産量について、同社広報グループは「現時点でお答えしていない」とした。
米バイオ企業の日本子会社、VLPセラピューティクス・ジャパンも独自のmRNAワクチンを大分大や大阪市立大などと共同開発している。治験は10月に始まる予定で、22~23年中に実用化する意向。生産は富士フイルムが担う。
明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクスが東大医科研などと取り組んでいるのは、従来型の不活化ワクチン。日本脳炎やインフルエンザなどで普及しており、同社広報は「実績ある手法で安全性が期待できる」という。早ければ22年内に承認申請し、23年の実用化を目指す。22年春までに6カ月間で最大1750万人分の生産体制を整備するとしている。