この夏も多くの外国人観光客が日本を訪れた。
国土交通省・官公庁が、外国人の「都道府県別訪問状況の分析」を行っている。最新データの2023年度から以下引用しつつ、日本の都道府県のどこに訪れ、どれくらい国内を回遊しているかを見てみよう。
※以下、「国土交通省・官公庁 2023年度トピックス分析テーマ1. 都道府県別訪問状況の分析」より引用
なぜアメリカ人は東京へ? 「首都である」以外の理由
まずはアメリカ人のランキングを見てみると、以下に続く中国・台湾・韓国と比較して圧倒的に東京がランクインしている割合が多く、10位までは「東京×○○」であることがわかる。
この背景にはアメリカでの空前絶後のジャパニーズカルチャーブームがある。
アニメはいうまでもなく人気を博しており、特にここ数年で人気なのは、「呪術廻戦」「鬼滅の刃」「ワンピース」「進撃の巨人」「ジョジョの奇妙な冒険」という。アメリカのアニメファン達は、作中のきれいな景色を見て日本旅行に興味を持ち始めたり、アニメのキャラクターたちが実際に訪れた場所を追随する「聖地巡礼」を夢見るのだという。
また、最近はアニメだけでなく「J-fashion」という原宿系やギャル系、ロリータなどを総称した日本のファッションも人気であり、そこからインスピレーションを受けるファッショニスタなアメリカ人も多い。ちなみに、アメリカ人は小学生の頃から「Kawaii」という単語を知っているだけでなく、頻繁に使っているらしい。
日本に住む我々は、メディアの報道する海外の日本人気がどうしても日本人バイアスのかかった、誇張されたものなのではないかと疑ってしまうが、実際にアメリカでは、ジャパニーズカルチャーは我々が想像する以上に浸透しているのである。
Getty imagesまとめると、アメリカから日本への旅行は、アニメの聖地巡礼やJ-fashionの源泉に行くことを目的としての割合も高く、日本の文化を「本場で」楽しみたい多くのアメリカ人が、旅行先に日本を選んでいると言えよう。
よって、アニメやファッションなどの文化の中心となっている東京が、中国や韓国など他国に比べて特にアメリカ人に、観光地として選ばれる傾向にあるのだ。
中国人は「アニメ」以外に──
中国からの旅行者の場合もトップは東京都単独。次いで京都府x大阪府、京都府x大阪府x奈良県が5位となっている。
中国が、東京ばかりがランクインするアメリカと違い、このように10位までに関東圏と関西圏がバランスよく混在しているのは、中国人の日本旅行目的に理由がある。
アメリカの旅行目的がアニメ中心だったのに対し、中国の旅行目的は大きく分けて「アニメ」「歴史的観光」「ショッピング」の3つに分けられるという。アニメ観光を目的とする旅行者が関東圏へと向かうのは、アメリカと変わらないが、歴史的観光をする際は奈良や京都へ、ショッピングには大阪へ向かうという。
昔ほど「爆買い」というワードを聞くことはなくなった現在であるが、中国からの観光客はまだまだショッピングが好きなようだ。
北海道x東京都も15位、長野県x東京都が18位にランクインしている。
台湾からの向かい先には「気候」が関係?
台湾からの旅行者の場合、どうだろう。トップが沖縄県なのは地理的にうなづけるが、2位に北海道がランクイン。3位が東京都となっている。4位は京都府x大阪府、5位が千葉県x東京都だ。
2位に北海道がランクインしているのは、どうやら台湾の気候が関係しているようだ。
台湾は1年中温暖な気候であり、夏は28~30度前後、冬でも15~20度前後の気温となる。そのため、日本の様な冬を感じられない台湾人にとって、北海道の雪景色やスキーなどのアクティビティ、自然豊かな大地でとれる食材は非常に魅力的なものであるのである。
なぜ韓国だけ「福岡」一位?
韓国の場合はどうだろう。1位は福岡県、2位は大阪府。3位にようやく東京都がランクイン。4位が京都府x大阪府、5位が北海道となっている。
福岡は確かに東アジア諸国に近い場所に位置しており、東アジア地域からの旅行客が多いことが予想できるが、実際に中国・台湾のランキングを見てみると福岡は10位以降にランクインしており、実は予想程多くない。そんな中、韓国だけが一位に福岡を堂々と据えていることに理由はあるのだろうか。
1.関東へ旅行するより安い
やはり一つ目の理由は、圧倒的価格の安さだろう。
例えば、2024年11月4日のエアソウルによる仁川国際空港から成田空港の往復運賃は、最低価格で日本円にして43840円だ(※2024年8月16日時点)。一方、仁川国際空港から福岡空港への同日の往復運賃は31210円であり、約1万2千円ほどの差がある。
また、もっと驚くべきなのは福岡に最も近い韓国の都市「釜山」から福岡へ船で行く場合だ。
クイーンビートルで行く場合は、往復で27800円、カメリアライン等が運営するフェリーの最安プランで乗船した場合は往復運賃は脅威の16800円だ。福岡にフェリーで最安プランを利用して旅行するとすると、その運賃は、飛行機を用いた東京旅行よりも約2万7千円安くなる。多少付け加えれば、これは福岡に住む日本人にも同じことが言えるのである。
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2.福岡紹介Youtuber「福岡アジョシ」の存在
二つ目の理由を挙げれば──というより補足するならば、福岡を紹介するYoutuberの存在も寄与しているかもしれない。特に「福岡アジョシ(韓国語で「福岡おじさん」)」というYoutuberはその中でもひときわ大きな存在感を放っている。
このチャンネルは30代の日本人男性が一人称視点・韓国語で送るチャンネルで、福岡・九州の飲食店等を分かりやすくレビューしている。
観光雑誌とは異なり、一人称視点で、実際に訪れる際のシュミレーションができるという点が韓国の若者を惹きつけ、日本へ踏み出しやすくさせているのかもしれない。