国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。
ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
ニッポンの白い未来と黒い未来
空き家が増えて治安が悪化する地域が!? 地球温暖化でチョコレートが超高級品!?……日本や東京のヤバい未来に迫ったフジテレビの番組「サンド石井のニッポンの白い未来黒い未来」に『未来の年表 業界大変化』著者の河合雅司氏が出演した。あれから1年、日本の未来予測はそれほど変わっていない。
大人気お笑いコンビ・サンドウィッチマンとフリーアナウンサー・石井亮次氏がMCをつとめ、日本の未来や2030年の東京で起きうることを詳細に報告した同番組ではまず、円安なのに1980年代のように売れる「Made in Japan」が少ないことが取り上げられた。
2022年の技術革新力ランキングで13位に沈む日本の現状について、河合氏は「日本ならではの新製品や世の中を劇的に変えるモノが、しばらく誕生していない、日本の技術そのものが弱ってきてしまっている」とコメント。
さらには、「新しい技術が開発できないと……サンドさんの故郷・仙台が消滅します」という報告も。
外国人労働者なしでは成り立たなくなりつつあるが円安の影響で自国より稼げなくなると労働力が確保できなくなる。すると、コンビニ店員、野菜を作る人、漁師がいない……といった状況に陥る未来だってありうる。
例えば、建設業界で働く外国人11万人が去ってしまうと、家の建設5年待ち、マンション建設10年待ちも当たり前になり、道路や橋のメンテナンスが滞ってしまえば、地方都市への流通が軒並みストップし、地方のお店は閉店ラッシュに追い込まれるかもしれない。
河合氏はこうした状況については、「仙台が消滅する!は言い過ぎだが、仙台までもが!が正しい。もっと深刻に考えなければいけないのは、長期にわたって日本の円が弱くなっていくのかということ。経済が縮小していくと、日本も東京もダメになっていく。人口が減っても少子高齢化が進んでも経済が成長するようにすれば白い未来がやってくる」と語った。
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2030年の東京の「衝撃的な姿」とは?
同番組で興味深かったのは、2030年の東京をリアルに再現したドラマを放送したことだ。
AIロボット関連の営業をする30代独身女性の人生を通じて日本の未来、恋愛、食事、職業、住居などがどう変わるかを描くという試みだ。
ドラマで描かれた未来は次のようなものだった。
・VR遠隔レストランが当たり前に!?
・再生医療で若い肌を取り戻す!?(実年齢60歳でも35歳くらいに見える人が増える?)
・30歳女子は若者、希少価値あり!?
・女性の平均年収が大幅にアップ!?
・稼げる職業が激変する!?(イケてる職業:第3位人工肉クリエーター、第2位仮想空間のコンテンツをつくる仮想空間創造師、第1位企業の機密漏洩を防ぐホワイトハッカー)
・50歳時の未婚割合男性28.0%、女性18.5%!?
・ロボットもパートナーの候補に!?
・(東京では)空き家が増えて治安が悪化する地域が!?
・東京のど真ん中で野菜を栽培!?(太陽光の代わりにLEDライトを使用)
・成長の速い魚を親に!「代理母親魚技術」(サバが産んだマグロが誕生する日も)
・培養技術でシマウマの肉も食べられる!?
・カキが超高級品に!?(二酸化炭素が増えることで養殖が難しくなる)
・AIで餌やりで管理してコスト削減!?
・地球温暖化でチョコレートが超高級品!?(2050年までカカオの木が絶滅する可能性)
・タワマンは一部を除き下落する!?
・海底マンション建設が進行中!?
・出産はリモート立ち会い!?
・先行き不安から「未来」はネガティブワードに!?
人口減少対策は「夏休みの宿題」?
ドラマの最後に流れたテレビ番組のニュースの内容は、あまりに衝撃的な未来だった。
空き家にいた大量のスズメバチに襲われそうになって逃げた還暦男性(再生医療で若返っている)が登場。高齢者ドライバーが運転する車とぶつかって事故を起こし、救急車を呼んだら「いまは救急隊員がいない」と言われて自力で病院に行ったら輸血用の血液がないので手術は無理です――いくつもの要因が重なり合う絶望的な内容だった。
このドラマを受け河合氏は「まだまだ日本は力を持った国、今から始めれば十二分に活性していく」とコメント。
はたして、今から日本は、日本人は、マインドを変えることができるか。
河合氏は『未来の年表 業界大変化』の中で人口減少を「夏休みの宿題」と形容している。
〈人口減少対策とは「夏休みの宿題」のようなものである。いつかはやらなければならないと頭では分かっていても、ついつい後回しにしがちだ。その変化は日々の暮らしの中では目に見えないほど軽微なためである。「まずは目の前の課題をこなすことが先だ」と言い訳しながら、時だけが過ぎていく。〉(『未来の年表 業界大変化』より)
つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。