宮城県内でクマの目撃が相次いでいます。10日には、大崎市鳴子温泉末沢の山林で畑仕事をしていた60代男性がクマに襲われたことを受け、県は11日に「出没注意報」を初めて発令しました。冬眠を終え、食べ物を探すクマが春以降に増えており、農地周辺や住宅地近郊では、警戒が一層必要になりそうです。(編集局コンテンツセンター・吉江圭介)
5月の目撃情報は88件
県のまとめ(11日時点)によると、1~3月のクマ目撃件数は1カ月当たり10件以下でしたが、5月は88件確認されました。ピークを迎える夏場は近年、100~200件程度に増加します。
仙台市では5月、県全体の3割近くに当たる24件の目撃情報がありました。青葉区八幡5丁目といった市街地でも目撃されています。
個体数増加で生息域拡大か
県はツキノワグマの管理計画で、人里に出没する理由として①生息地でのブナ、ナラなどの食べ物不足②中山間地域の過疎化、高齢化③新興住宅地の拡大④人家周辺で収穫されずに放置された果樹や廃棄農産物―などを挙げています。
個体数の増加に伴う生息域の拡大も一因として示しています。宮城県の調査によると、ツキノワグマの推定生息数は2014年度、1669頭。一貫して増加しているとみられ、2021年度には3629頭と2倍以上になりました。
県が予報「平年より出没多い見込み」
最近は、農作物被害など人とクマのあつれきが顕在化するようになっています。県内でクマに襲われてけがをした人は2022年度、過去最多の7人に上りました。
県は被害を抑えようと、2023年度に「クマ出没シーズン予報」の発令を始めました。4~11月の予報によると、前年度に山の餌が豊富で繁殖が盛んに行われたため、個体数の増加が見込まれるとして「平年よりも出没が多い見込み」となっています。