宮城の3海水浴場、ブルーフラッグ取得も異例の処理水関連条件付き IAEA基準外れたら「直ちに旗を降ろすこと」

 宮城県気仙沼市大島の小田の浜海水浴場と南三陸町の海水浴場サンオーレそではま、七ケ浜町の菖蒲田海水浴場が、東北の海水浴場で初めて、国際環境認証「ブルーフラッグ」を取得した。東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を控え、異例の「条件」が付され、水質が国際基準を満たさない場合は「旗を降ろす」ことを求められた。

取得は東北初だが…関係者素直に喜べず

 ブルーフラッグは、環境や安全面の基準を達成して海辺の持続的発展を目指す仕組みで、国際NGO国際環境教育基金(FEE、デンマーク)が認証する。水質や環境保全、安全性など4分野で約30項目の基準を満たす必要がある。

 ブルーフラッグの国際審査委員会が3カ所の認証を決めた。決定を伝える6月29日付の文書が、国内運営組織の一般社団法人JARTA(京都市)を通して各申請元に届いた。各海水浴場で今季中にブルーフラッグが掲げられる見通しだ。

 文書では処理水に関して、初回放流の2週間前までに正確な放流日、海水サンプルの採取日と採取場所など詳細な報告書を提出するように要求。水質などの状況が継続的に評価できるように求めている。

 サンプリングの結果、国際原子力機関(IAEA)が定めた国際基準に適合しないことが判明した場合は「自治体は直ちに旗を降ろさなければならない」と明記。ブルーフラッグの基準などに反する場合、FEEが必要な措置を取れることにも言及した。

 ブルーフラッグは欧州で認知度が高く、世界で5000カ所以上が認証を取得。国内では由比ガ浜海水浴場(神奈川県鎌倉市)など海水浴場7カ所、マリーナ1カ所が取得している。認証は1年ごとの更新制で、毎年審査が必要になる。

千葉・勝浦は条件なし「なぜ宮城だけなのか」

 ブルーフラッグの認証を取得した宮城県内の3海水浴場は東日本大震災の津波で大きな被害を受けた。地元は取得を歓迎する一方、処理水の海洋放出に伴う「条件付き」をいぶかった。

 小田の浜海水浴場を運営する気仙沼市観光協会は昨年夏から水質調査や安全確認を重ねてきた。協会関係者は、処理水関連の条件が付いたことに「素直に喜べない」と語る。

 認証は本年度初めとみられていた。国際審査委員会は「処理水に関する情報の精査のため」と遅れた理由を説明。5月に認証を受けた千葉県勝浦市の興津海水浴場は条件なしだった。関係者は「なぜ宮城だけなのか。JARTAを通じて協議を続けたい」と話した。

 サンオーレそではまがある南三陸町の佐藤仁町長は「IAEAが処理水放出の安全性に問題ないとの報告書を出したのに、認証基準にないサンプリングや報告書提出を求めるのは整合性が取れない」と指摘。「自治体が対応できる問題ではなく、国が審査委と交渉してほしい」と求めた。

 菖蒲田海水浴場を運営する七ケ浜町観光協会は安全面に加えて環境面、バリアフリー面で準備を進めてきた。我妻典夫会長(61)は「世界的な旗印を掲げることで地元の海を守る、海を生かしたまちづくりを進めるという機運を醸成していく」と意気込んだ。

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