下流老人、老後破産…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。本記事では、日本年金機構が公表している年金額より、老後のリアルを追っていきましょう。
厚生年金「22万円」…現役世代にとっては遠い夢なのか
国税庁『令和3年分 民間給与実態統計調査結果』によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は443万円です。ボーナスなどを含めない場合、月の収入では37万円。手取りにすれば約29万円といったところです。
日々の暮らしで精いっぱいながらも、老後不安は増すばかり。日本年金機構は今年4月、年金額が引き上げ(67歳以下の方<昭和31年4月2日以後生まれ>は原則2.2%の引き上げ、68歳以上の方<昭和31年4月1日以前生まれ>は原則1.9%の引き上げ)になったことを受け、平均受給額を公表しました。令和5年度の金額は下記のとおり。
国民年金(老齢基礎年金(満額))・・・66,250円
厚生年金※(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)・・・224,482円
夫婦合わせて30万円強。それなら安心……と考えたいところですが、厚生年金の下には「※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。」との注釈がついています。
平均的な収入43.9万円。ちなみに最新の家計調査では勤労者世帯の実収入(2人以上の世帯)が1世帯当たり「46万9,992円」であったことが明かされています。働き方も依然と様変わりした現在、「しっかり40年勤め上げる」というのも、珍しくなってきました。上記の年金額をそのまま受け取れる方が必ずしも多いとは限りません。
何より、日本の年金は賦課方式。現役世代が納めた保険料を年金受給者が受け取っています。超少子高齢化の日本では、「支える側(現役世代)の負担」が大きくなる一方であることは自明であり、「年金制度は崩壊している」とよく論じられます。
「年金額が今の人よりすっごく減るって聞いたけど……」
囁かれる噂に対し、厚生労働省が運営している『いっしょに検証!公的年金 〜財政検証結果から読み解く年金の将来〜 ー 厚生労働省』では次のように回答しています。
「損得を論じる性質のものではありません。」
“いま、若い方々を中心に、公的年金に対して「自分たちの世代では、払った保険料が戻ってこない(受け取れる年金額<払った保険料)のでは?」という、損得に関する意見が聞かれます。
また、「今の受給者と現役世代では、給付される年金額に大きな差がある」という、世代間の差についての意見もあります。
これらの意見の中には誤解もありますが、そもそも公的年金制度は、現役世代が受給世代を扶養する「世代間扶養」の仕組みのもとで運営されている、社会保障制度です。本来、個人や世代の差による損得を論じる性質のものではありません。
しかし、高齢になったとき、あるいはご自分の身になにかあったときの生活を支えるものとして、重要な課題だと考える方も多いと思います。”
「損得を論じる性質のものではありません」とは、18歳以下現金給付をめぐり、世間が大きく揺らいだときにも示された言説です。はたして腑に落ちるかと言われれば、少し疑問が湧くところでもあります。
老後に備え、投資信託をはじめとした資産形成への注目が高まっていますが、あくまでそれは余裕資金があってのこと。最低限の保障という地盤も危ういなかで、どうやってお金を稼いで貯めていくのか。賃金が上がらない日本での「生き方」そのものが問われています。