日本ではほぼ無名、富山出身の兄弟バンドが全英チャート8位…CD一時売り切れ状態でSNSでも大反響

富山市出身の兄弟で活動するロックバンド「SAHAJi(サハジ)」が今年1月、「Future In The Sky」で、全英チャート8位に躍り出た。国内ではほぼ無名だが、6月にはロンドンツアーも控える。2人は「国籍も住む場所も関係ない。本物を追求し、聴く人を勇気づけたい」と意欲に燃えている。(田上拓明) 【写真】幼い頃からギターが身近にあった(富山市内の自宅で)

♪14歳での楽曲

ロンドンでライブを行う蕉太郎さん(中央)と曜志朗さん(右)(2024年1月)

 「Future――」はボーカルでギターの兄・西田蕉太郎さん(33)が14歳で作詞作曲した楽曲。弟・曜志朗さん(31)の悠然としたギターのメロディーに合わせ、蕉太郎さんの爽やかで力強い歌声が響く。

 「5分くらいで作った」と蕉太郎さんは笑う。着想を得たのは意外にもミュージカルの名曲「虹の彼方に」。「Somewhere」からの歌い出しが美しいと、「Someway I can find the love」から歌い始めることにした。

♪小学生でライブ

 両親が音楽好きで、蕉太郎さんは6歳、曜志朗さんは5歳でギターを始めた。同じく兄弟で活躍した英ロックバンド「オアシス」に衝撃を受け、小学生で路上ライブをするように。「親からお小遣いをもらったことはない。投げ銭で機材を買った」と振り返る。

 兄16歳、弟14歳の頃、若手アーティスト向けの全国大会で奨励賞を獲得。レコード会社と育成契約を結び、3年後には上京したが、世界を目指す2人は日本語で歌うスタイルが合わず、すぐに富山へ戻った。

 そこから約10年。兄弟は芽が出ず、鬱屈(うっくつ)とした思いを抱えていた。そして2020年のクリスマス、ためていた思いが爆発するかのように「くだらないこと」で大げんかになった。蕉太郎さんが大声で言いたいことを言い尽くした後、曜志朗さんが一言、「じゃあ結果出せよ」とつぶやいた。蕉太郎さんは単身上京し、2人は約1年、連絡を絶った。

♪大物との出会い

 弟の一言が響いたのか、蕉太郎さんはSNSを通じて音楽関係者に積極的なアプローチをした。すると22年秋、運命が動き出す。蕉太郎さんは、交友があったロンドンのアーティストのライブに足を運び、意気投合。急遽(きゅうきょ)ライブに参加することになり、弟も英国に呼び寄せた。

 さらに、オアシスなどを手がけてきた音楽プロデューサーのニック・ブラインに連絡すると、奇跡的に「1時間なら」と会えることに。「スタジオを案内してビールでも」という軽い雰囲気だったニックに熱い思いをぶつけ、その場で「Future――」を披露。「すばらしい」と、二つ返事でCDデビューが決まった。

 そして24年1月のデビューから約1週間後、全英のシングルCDの売り上げ枚数ランキングで8位になった。一時はCDが売り切れ状態になり、SNSでも大きな反響があった。

 「SAHAJi」は、サンスクリット語で「自然に成長する」という意味だ。20年以上前につけた名前だが、曜志朗さんは「今思えばぴったり。誰かに音楽を教わったわけでもないから」とほほえむ。「やり続けてきてよかった」と蕉太郎さんは達成感を感じつつ、満足はしていない。「最終目標はグラミー賞。日本人初の世界的なロックンロールスターになる」。彼らの真の“成長”はこれからだ。

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