東北の公立小中高校で教員の欠員深刻 全体の1割の306校で計335人不足

6県と仙台市で5月1日時点の教員不足の人数や学校数は表の通り。

 校種別では小学校206・5人(189校)中学校82人(84校)高校9人(7校)特別支援学校32人(23校)など。県別は福島143・5人(131校)青森64人(58校)岩手50人(48校)と続く。小数点以下があるのは、非常勤教員を勤務時間に応じて1人未満で換算するケースがあるためだ。

 小学校で学級担任ではない教務主任らが担任を代行しているのは宮城、青森、山形、福島の4県と仙台市の計23学級。中学校で本来の教科担当がいないのは同じ5県市の計10教科23人。宮城県では他校教員の兼務や、教科の免許を持たない教員が例外的に教える制度の活用例があった。

 教員不足を巡り文部科学省が21年度に初めて実施した全国調査で、東北6県の欠員は172人(143校)だった。22年度の不足人数は21年度の1・9倍、学校数では同2・1倍に増えたことになる。

主な理由は「代替講師の不足」

 欠員の主な理由は「代替講師の不足」だ。近年は第2次ベビーブーム世代(1971~74年生まれ)に合わせて大量採用した教員の定年退職時期と重なり、正規採用者の枠が拡大。「従来は欠員を埋めていた非常勤講師の正規採用が増え、講師の数自体が減っている」(山形県教委)という。

 「新型コロナウイルス感染への不安から講師に派遣を断られた」(仙台市教委)、「講師の教科や勤務希望地域と、必要な教科や赴任地域とのミスマッチが起こった」(秋田県教委)などの事例もあった。

 発達障害などの児童生徒が在籍する特別支援学級の増加も一因で、青森県の小学校は22年度、特別支援学級が42学級増えた影響で教員の欠員も21年度から43人増の56人となった。福島県は東京電力福島第1原発事故もあり「復興推進加配で定数が多い分、人材が集まらないと欠員も増えてしまう」(県教委)という。

 各教委は代替教員の確保に知恵を絞る。秋田県はフルタイムに近い形で働きたい非常勤講師のために、従来の週18時間勤務に加え週30時間の勤務形態を新設。岩手県は文科省の人材バンクを活用する。青森県は教員採用試験の不合格者に非常勤講師として勤務が可能かどうか、早期に声がけしている。

 特定分野に精通する人材に教員資格を認める特別免許状制度は、6県教委で導入例があった。

学校、やりくりに腐心 「平時から多忙」余裕なし

 仙台市のある小学校では6月上旬、3年生の学級担任が病気休暇になった。講師派遣を市教委に依頼したが「すぐには難しい」と告げられた。

 児童支援担当の50代の女性教員が急きょ、担任を任された。「児童の名前も顔も分からないところから、引き継ぎなしでスタートした。子供たちのために頑張ろうとの一心だった」と振り返る。

 女性教員自身も家族の介護で休暇を取ることがある。「いろいろな先生が教室に入り、児童が落ち着かなくなる面があるかもしれない」と影響を心配する。

 それまで女性教員が担ってきたいじめ・不登校対策など児童支援の役割は教頭や教務主任らで分担している。校長は「教員は平時から多忙で多くの仕事を抱えており、1人の欠員で1人分以上の負担が周りに波紋のように広がる。そもそも教員の定数自体がぎりぎりだ」と訴える。

 同市の中学校では5月中旬、主要教科を教える学級担任1人が病休に入った。4学級週4時間の教科は教頭が各3時間を受け持ち、残り各1時間は同じ教科の教員が担う。担任は副担任が引き継いだ。

 校長によると、当初は3人以上の教員で分担することも考えたが、授業内容の打ち合わせや評価基準のすり合わせに時間を要することが分かり、教科免許を持つ教頭が専ら担うことにした。校長は「生徒の勉強に支障を来さないことを最優先にやりくりしている」と説明する。

「定数増の改革必要」

 宮城教育大教職大学院の本図愛実教授(教育制度・経営)の話
 教員定数は学級数や加配によって細かく決められ、病休や特別支援学級の増加など突発事例に対応できる仕組みになっていない。欠員が生じて現場の負担が一層増す悪循環が起き、児童生徒の微妙なサインをキャッチできない恐れがある。正規教員の定数を増やす抜本的な改革が必要だ。例えば週40時間のシフト制勤務に改め、不足時間分の人数を正規採用してはどうか。教員数が少ない実技系科目は、追加の教員を近隣の複数校で共有する方法も考えられる。

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