東北学院大五橋キャンパス(仙台市若林区)のオープンから間もなく2カ月になる。近隣では学生の往来が増え、にぎわいが目立つ。商店街は昼時の集客を狙ったサービスを展開。新入生や在校生の入居で不動産需要も高まり、開設効果が早くも現れつつある。(報道部・武田俊郎、水野良将)
商店街や賃貸 活発な動き
正午前、ランチを求める学生たちがキャンパスから飛び出す。徒歩10分圏内の荒町商店街(若林区)=地図=では、飲食店に入店や会計を待つ10人前後の列ができ始めた。
西端の弁当販売店「からあげの達人×弁当 からたつ」は、500円で食べられるワンコイン弁当の販売、学生証の提示でご飯特大(通常100円)の無料サービスを実施。店員の鈴木慎也さん(30)は「来客数は昨年と比べてざっと2倍」とほくほく顔だ。
商店街の中ほどに構える「ラーメン一翔(いっと) 荒町本店」も、学生証の提示で味玉1個やチャーシュー1枚、中ライス1杯のいずれかを無料にするなど多彩な学割を用意する。店員の鷲尾大輔さん(32)は「2015年の市地下鉄東西線開通で人の流れが変わり客足が落ち込んだが、キャンパス開設で活気が戻った」と商店街全体のムードを語った。
東西約600メートルの商店街には、シャッターを下ろしたままの店はほとんどない。不動産業「就学館」の担当者は「飲食店やスポーツジムなど荒町かいわいへの出店の動きは今後も続く」と予測する。
賃貸物件の動きも活発だ。20年以降、キャンパスの3キロ圏内に整備された学生向けマンションは少なくとも17棟(1251戸)。23年2月に完成した物件に住む地域総合学部1年の男子学生(18)は「ワンルームで月6万円台とやや高いが、食費が平日1日2食で月2万円台。学校も近くて暮らしやすい」と納得顔だ。
流入したのは新入生だけではない。平和住宅情報センター仙台駅前店(青葉区)の斎藤麻記子さん(41)は「(キャンパス機能移転集約前の)泉、多賀城両キャンパスに通っていた学生の住み替えも一定数あった」と説明する。
同社は22年度、学院大生協と提携して例年より多い500件以上の入居をあっせんした。「キャンパス周辺で家賃5万円前後の物件はマンション、アパートともほぼ満室状態」(斎藤さん)という。
近年は駐車場もニーズが高まり、月極、時間貸しとも満車に近い状況が続く。経営者の世代交代に合わせ、古い店舗をたたんでコインパーキングに衣替えする事例も相次ぐ。
地元の不動産関係者は「都心に近く、利便性が高いエリア。地価も上昇傾向にある」と指摘。学生だけでなく、大学職員を含む社会人の利用増が活況の要因とみている。
地域と学生 新たな交流も
東北学院大五橋キャンパスの開設を機に、学生と周辺地域との新たな交流も芽生えている。
文学部3年の千葉優介さん(20)=若林区=は4月下旬、地元企業が2021年から取り組む清掃活動に参加した。
学内の防犯ボランティア団体「TGU防犯ボランティアING」に所属し、子どもの見守りなどにも関心がある千葉さん。土樋キャンパス(青葉区)での授業が多いが、「今後は交流サイト(SNS)を通じて五橋の学生にも参加を呼びかけたい」と意欲的だ。
荒町商店街の店先にはキャンパス開設前の3月から、「祝 開学」と書かれたタペストリーが揺れる。デザインしたのは書道研究部。若林区が大学に依頼し、作業を引き受けた。
部員の文学部2年相沢咲都(さと)さん(19)=東松島市=は「部活動を通じて地域と関われたのがうれしい。丸みを帯びた筆運びで親しみやすさを表現した。自分たちも地域に足を運びたい」と話す。