東北電、最高益決算も…「電気料金」引き下げには慎重姿勢 「財務基盤の回復に注力したい」

東北電力は30日に発表した2024年3月期連結決算で、過去最高の経常利益と純利益を確保した。2期連続の赤字で悪化した業績はV字回復したが、樋口康二郎社長は財務基盤の強化を理由に挙げ、電気料金の引き下げには依然、慎重な姿勢を崩さない。物価高で家計が圧迫されている顧客からは、東北電に厳しい視線が注がれている。(経済部・樋渡慎弥)

東北電が過去最高益2261億円 24年3月期、黒字転換

自己資本比率の改善目指す

 「業績はいい状況にあるが、財務基盤の回復に注力したい」。仙台市青葉区の本店で記者会見した樋口社長は、こう強調した。

 財務の健全性の指標となる自己資本比率は24年3月期が15・4%だった。大手電力は20%台が安定水準とされるが、東北電は22年3月期から2期連続で最終赤字となり、23年3月期に10・5%まで落ち込んだ。

 樋口社長は「財務基盤を立て直すには、現状の利益レベルの継続が必要」と説明。一律の値下げに踏み切った場合、設備更新などに投資が回らず「電力の安定供給に支障を来す」と危機感をにじませた。

 過去最高益を計上した足元で、東北電は24年春闘で基本給を底上げするベースアップを08年以来、16年ぶりに実施。株主配当も無配だった前期から一転、24年3月期は復活させた。最高益の恩恵を受けていないのは顧客だけとも言える。

 同じく24年3月期に純利益が過去最高となった中部電力は、小売り子会社「中部電力ミライズ」(名古屋市)が子育て家庭や高齢者世帯を対象に、電気料金の引き下げに踏み切った。担当者は「グループ全体で取り組む経営努力を踏まえた負担軽減策」と説明する。

 これに対し、東北電の樋口社長は記者会見で最高益の顧客への還元策を問われ「収支の見通しを踏まえつつ、検討していく必要がある」と述べるにとどめた。

樋口康二郎社長「女川再稼働へ、しっかりと取り組む」

 2024年3月期連結決算を発表した東北電力の樋口康二郎社長の記者会見での一問一答は次の通り。

 -2期連続の赤字から一転、過去最高益となった。

 「燃料価格の低下で利益が大きく押し上げられ、電気料金の見直しや高効率火力発電の稼働増加も収支改善の要因となった。自然災害や燃料高騰といったリスクへの耐性を高めるため、依然として低い自己資本比率を改善する必要がある」

 -中国電力が島根原発2号機(松江市)の再稼働時期を8月から12月に延期した。女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)が9月ごろに再稼働すれば、東京電力福島第1原発と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)では、東日本大震災後初めてとなる可能性がある。

 「どのプラントが1番ということでなく、女川2号機の再稼働に向けて、しっかりと取り組みたい。安全対策工事はスケジュール通りに進んでいる。女川は震災の被害を受けた原発で、再稼働は歴史に残る一大プロジェクトだと発電所員にも話している。一緒になってやり遂げたい」

 -円相場が4月29日に1ドル=160円台まで急落した。25年3月期連結決算の業績見通しは1ドル=150円程度を見込んでいる。

 「レートの急激な変動は好ましくない。円安になれば燃料価格が上がり、顧客の負担も増えるので危惧している。電気料金が下がるという意味では、円高になる方が望ましい」

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