楽天モバイルの契約数が好調 なぜ法人も個人も伸びているのか

 楽天モバイルの契約数が好調だ。同社は携帯キャリアサービスへの本格参入4周年を迎えた2024年4月に契約数650万回線を突破。そのわずか2カ月後の6月に700万回線の突破を発表した。料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を2022年7月に開始して以降、3カ月間の純増契約数が過去最大数を記録したという。 【画像】やっぱり“最強”? 「楽天モバイル」人気の秘密  6月末には、総務省より認定を受けた「プラチナバンド(700MHz帯)」の商用サービスを開始。念願の黒字化に向けて、個人および法人に向けてさまざまなキャンペーンやお得なプログラムを展開している。  そんな中、なぜ、ここ数カ月で契約数が順調に伸びているのだろうか。好調の理由や近年力を入れている取り組みなどを広報担当者に聞いた。

データ無制限、1テラバイト以上使っても月額3278円

 楽天モバイルは「携帯市場の民主化」を掲げ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに続く“第4のキャリア”として携帯キャリア事業へ新規参入。2020年4月にサービスの本格提供を始めた。  基本料金プランは1種類という分かりやすい料金体系が特徴で、現在は「Rakuten最強プラン」を提供している(「Rakuten UN-LIMIT VII」契約者は2023年6月に自動以移行)。同プランの月額料金はデータ利用量が3ギガバイトまで1078円、20ギガバイトまで2178円、20ギガバイト以上はどれだけ使っても3278円だ。  公式X(@Rakuten_Mobile)では毎月ハッシュタグ「 #今月のデータ利用量 」で、データ無制限でどれだけ利用したかを投稿してもらう企画を実施しており、過去には1テラバイト以上も利用したユーザーもいたほどだ。それだけ使っても料金は月額3278円となる。  「1回線当たりのデータ利用量は月ごとにバラツキがあるものの、全ユーザーの1カ月平均は24.5ギガバイトでした(2023年12月末時点)。市場全体でもデータ利用量は増えていて、同じように平均値も上がっています」  法人向けとして、2023年1月に「Rakuten最強プラン ビジネス」の本格提供を開始。個人向けの料金が利用したデータ容量に応じて連動する上限3256円のワンプランなのに対し、法人向けには顧客のニーズに合わせた7つのプランを用意しており、最も安価なプランだとデータ容量が3ギガバイト月額1078円から契約できる。  700万回線の内訳は非公開としているが、「Rakuten 最強プラン」「Rakuten 最強プラン ビジネス」「Rakuten Turbo」、MVNE(Mobile Virtual Network Enabler:大手キャリアと格安SIM提供事業者をつなぐ中間業者的な事業者)を合わせた契約数となり、Rakuten 最強プラン ビジネスについてはサービスの提供から1年で1万社以上が利用している。

契約数が好調な3つの理由

 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は2024年5月に行った「2024年度第1四半期決算説明会」の中で、契約数が好調な理由として(1)法人加入の増加、(2)個人加入の増加、(3)脱退(解約)の大幅改善、の3点を挙げている。  法人については、中小企業だけでなく大手や自治体での導入も進んでいる。提供する7つのプランのうち、特に「音声+データ無制限プラン」(月額3278円)が好評で、直近ではオプションやソリューションサービスも幅広く提供するなど、法人顧客の多様な業務形態に対応できるよう、幅広いサービスを取りそろえている。  個人向けには、2月に家族全員の月額料金が110円引きとなる「最強家族プログラム」、3月に22歳までなら追加で実質110円引きとなる「最強青春プログラム」、5月に12歳まで実質月額480円の「最強こどもプログラム」を発表。「春商戦に向けてタイミング良く各プログラムを打ち出せたことで、家族契約の割合が2倍、学生の契約数が増加しました」  SNSを活用した楽天モバイル社員による紹介キャンペーンも好調だ。こちらは三木谷氏自らがXなどを通じて告知している紹介キャンペーンと同様に、従業員紹介のURLから申し込むと通常のキャンペーンよりも多くの楽天ポイントが付与される。一部では“どぶ板営業”とも表現されているが、こうした取り組みも700万回線の突破に大きく寄与しているという。  その他、楽天グループ間のシナジーを活用した施策にも力を入れている。3月と6月には楽天カードと楽天モバイルが共同で、期間中に楽天カードの新規入会&利用で1万ポイント、楽天カード会員限定で楽天モバイルに初めて申し込み&開通で2万ポイントを付与する「楽天マジ得フェスティバル」を開催した。  対象となる楽天グループのサービス利用に応じてポイント付与率がアップするSPU(スーパーポイントアッププログラム)では、2023年12月から楽天モバイルを契約しているだけで楽天市場での買い物時にポイントが+4倍、キャリア決済をしていれば、さらに+2倍になるなど、優遇措置を図っている。  このような複数の取り組みの結果、法人および個人についても契約数が順調に伸びているようだ。  担当者はこれまでの取り組みについて、次のように振り返った。「サービス開始当初に比べて、低廉でシンプルな料金プランやデータ無制限プランなどが好評を得ています。一方で、後発であるということもあり、品質に懸念を持つユーザーが一部いたことも認識しています。プランをアップデートしたり、サービス内容を拡充したり、ネットワークの品質を向上させたりしたことで、ユーザー数が増え、当初の懸念が払しょくされるようになったことも大きいと感じています」

念願の黒字化に向けて

 700万回線に続く次のステップとして期待されるのが、800万回線や楽天モバイルの単月黒字化だ。  三木谷氏は1月25日に行われた「新春カンファレンス2024」の中で、損益分岐点の目安となる800万回線を「2024年中に達成見込み」と語り、前出の「2024年12月期第1四半期決算」の中でも「黒字化目前」をアピールしていた。  単月黒字化に向けては、契約数と月間平均収入(ARPU)の増加がポイントとなるが、同社では主要KPIとして契約回線800万~1000万、ARPU2500~3000円を目標に掲げている。ちなみにARPUは、2024年3月時点で2024円だった。  通信品質の向上や5G対応エリアの拡大、屋内でのつながりやすさの改善など、各種施策と合わせることで、今後はどうなるか。注目したい。 (熊谷ショーコ)

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