止まらないジャニーズ離れ「ザ少年倶楽部」終了検討報道も…名称変更だけでいいの! サントリー新浪「ジャニーズ起用は国際的に非難の的になる」

60年以上も「アイドル帝国」を築いてきたジャニーズ事務所が揺れている。創業者の故ジャニー喜多川氏による性加害問題で、新社長に就いた東山紀之氏は「法を超えて救済・補償が必要だと思っている」と表明したが、所属タレントの広告起用などを見直す動きが企業に広がっているのだ。そんな中でサンスポが、「『ザ少年倶楽部』NHKが終了検討」と始まる見出しの記事を配信した。NHKの音楽バラエティーである同番組はジャニーズJr.ら多数出演する番組で「ザ少年倶楽部」で23年続く長寿番組だ。  9月7日の記者会見で東山社長は「社名は変わらない」と説明したことも批判の的になっている。経済アナリストの佐藤健太氏は「被害者への救済や補償は当然だが、タレントをいかに守っていくのかも示せなければ”ジャニーズ切り”は加速するだろう」と指弾する。

ジャニーズ東山新社長「人類史上最も愚かな事件」

「皆さまのご意見、ご批判を真摯に受け止め、今後の弊社の在り方について検討を重ねて参りました。本日、弊社取締役会を開催し、藤島が保有する株式の取り扱い、被害補償の具体的方策、社名変更、所属タレント及び社員の将来など、今後の会社運営に関わる大きな方向性についてあらゆる角度から議論を行い、向かうべき方針を確認いたしました」  ジャニーズ事務所は9月19日、公式サイトで東山新社長名の報告文書を掲載した。  今後は法務や税務などの論点を精査し、10月2日には進捗内容を具体的に報告するという。文書は「被害者の方々、取引先、ファンの皆さまにおかれましては、ご不安、ご心配、ご迷惑をおかけしております。どうか今しばらくお待ち下さいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます」と締めくくっている。  性加害問題をめぐり、ジャニーズ事務所は9月7日に東京都内で記者会見を開いた。東山新社長は「人類史上最も愚かな事件」と表現し、被害者への補償案について「急ぎでやらないといけない」と語っている。だが、同時に「答えをすぐに揃えるのは難しい」とも述べており、新社長としての権限や手腕が疑問視されることとなった。

ジャニーズ事務所の会見では、ファン・タレントを思う「誠意」が伝わってこなかった

 ジャニーズ事務所の株式は藤島ジュリー景子前社長が100%を保有している。ジュリー前社長は「今の時点で私が100%の株を持っていることが補償についても進みやすい」と説明したが、それは今後の事務所運営や補償などを考えれば“諸刃の剣”でもある。9月19日付の文書によれば、ジュリー前社長が持つ株式の取り扱いも議論したというが、わずか2週間足らずでどのような変化が生じているのか注目されるところだ。  言うまでもなく、この問題の被害者は全力で救済・補償されなければならない。長い間、沈黙せざるを得なかった芸能界やメディアの責任も問われている。ジャニーズ事務所の記者会見で残念だったのは、創業から60年以上も続く事務所を支えてきたファン、そして所属タレントに対する思いが伝わってこなかったことだ。  事務所には男性アイドルグループを中心に約300人のタレントが所属しているが、それを支えるのはファンであることは間違いない。それぞれの「推し」が全国各地で応援されることによって事務所が成り立っている。

サントリー新浪社長「ジャニーズ起用は国際的に非難の的になる」

 だが、創業者の性加害問題で企業には所属タレント起用見直しの動きが広がる。経済同友会の新浪剛史代表幹事は9月12日の記者会見で「企業としては断固として毅然たる態度を示さないといけない事象だ。事務所のタレントを起用することは性加害を企業が認めることで、国際的には非難の的になる」と指摘。サントリーホールディングスの社長である新浪氏は朝日新聞の取材に対し、今後2~3カ月の間に事務所の体制に改善がみられなければ所属タレントが出演するテレビ番組のスポンサーを降りることも選択肢であると語っている。他の企業も広告起用や契約継続の取りやめなどの動きを見せており、“ジャニーズ切り”の流れは止まない。  ジャニーズ事務所は今後1年間、広告出演並びに番組出演などの出演料はすべてタレント本人に支払うことなどを発表しているが、その程度のレベルの話でないのは誰の目にも明らかだろう。ファンの視点に立てば、それは「推し」を応援する機会が失われることになる。そして、日夜トレーニングを積む所属タレントの立場からすれば活躍の場が奪われることを意味する。

ジャニーズの名称変更は最低限

 東山新社長は記者会見で「名称を変えて再出発した方が良いとも思ったが、僕らはファンに支えられている。どこまで変更したらいいかを考えた」と述べているが、社名については「変わらない」と発した同席したジャニーズアイランドの井ノ原快彦社長は「犯罪者の名前ということについては考えていかなければならない」と付け加えたが、加害者の名前がついた事務所名が続く限り、それを見ただけでフラッシュバックする人もいる。しかし世論の反応を受けてか19日、それまでの発言とはうってかわって、名称変更の可能性を示唆した。もうめちゃくちゃと言っていい。  アイドル帝国としてのブランド価値や自負に加え、「関ジャニ∞」「ジャニーズWEST」「ジャニーズJr.」といった名前のグループをどうするのかも課題になるが、少なくとも社名変更は不可避だろう。その上で誤解を恐れずに言えば、たしかに新浪氏が言及したように企業側には「子ども虐待」「犯罪」を許さないという姿勢を示す必要があるのかもしれない。だが、性加害問題と関係のない所属タレントには何の「罪」もない。所属タレントは加害者ではなく、むしろ「被害者」だ。彼らを守る方策を早急に検討し、実行していく必要がある。

タレントには罪がない

 経団連の十倉雅和会長も9月19日の記者会見で「日々、研鑽を積んだタレントから活動の機会を奪うのは少し違うのではないか」と語っており、救済策を検討していく必要があるとの見解を示している。タレントが持ち前の魅力を発揮し、ファンが応援しやすい環境を早期に再整備することが求められる。  その観点から言えば、ジャニーズ事務所の今後は限られるだろう。最有力となるのは、現在の事務所は社名を変更した上で被害者の救済や補償を担う会社として残し、所属タレントは別の会社に「移籍」させる方法だ。契約上の問題など複雑な点が残っているのかもしれないが、事務所が新しい会社を設立して「移籍」させる。あるいは、全く別の会社に移ることを容認し、タレント活動がしやすい環境を整えることが考えられる。  加害者の名が紐付いた一部のグループは名称変更が必要になる可能性があるものの、タレントには「罪」がない。別会社に移籍すれば、タレント固有の魅力のみを考えて企業側も起用しやすくなるはずだ。事務所はあくまでタレントとファンによって成り立ってきた。その2つの要素をないがしろにせず、活かすための方策を練らなければならないタイミングにきている。  東山社長の仕事は被害者の救済・補償に加えて、タレントやファンにも向かなければならない。10月には進捗を報告するというが、内容次第ではスポンサー離れが加速するだろう。「ジャニーズの長男」が負うべき責務は極めて重い。

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