国立健康・栄養研究所がホームページ上で「水素水」の有効性について、「信頼できる十分なデータが見当たらない」という研究結果を発表した。また、「水素水」を飲んだことで体調不良を起こす人もいて、安全性についても同様のことが言えるのだという。
「水 素水」を巡っては、体の老化を進める活性酸素を除去したり、がんを予防したり、などと様々な情報が飛び交う。スポーツクラブの中には、ダイエットに有効だ などとして目玉企画で水素水生成器の導入を進めるところもある。これらに対する専門家の反論も相次いでいたが、今回の国立健康・栄養研究所の発表で、長く 続いた論争にピリオドが打たれるのだろうか。
ペットボトル容器では時間が経つと抜け出てしまう
研究結果が発表されたのは 研究所の「『健康食品』の素材情報データベース」(2016年6月10日)。まず「水素水」の定義として、水素分子(水素ガス)の濃度を高めた水であり、 (1)加圧下で水素ガスを水に充填する(2)マグネシウムと水、あるいはアルミニウムと酸化カルシウムと水の化学反応で作った水素分子で濃度を高める (3)水の電気分解で陰極側に発生する水、といった作り方がある。また、電気分解で調製された水は、還元水素水、アルカリイオン水、電解水素水などと呼ば れることがある、とした。そして、水素分子はペットボトルなどの容器では時間が経つにつれ抜け出てしまうから、アルミパウチの容器に入れる対応がとられて いる、としたうえで、
「俗に、『活性酸素を除去する』『がんを予防する』『ダイエット効果がある』」などと言われているが、ヒトでの有効性について信頼できる十分なデータが見当たらない」
と結論付けた。
有 効性を示す研究データはあったが、それは医療機関が疾病患者に対し行った予備的研究であり、市販されている多様な製品を摂取した場合も同様になるという根 拠にはならない、とした。さらに、水素分子(水素ガス)は腸内細菌によって体内でも産生されていて、その産生量は食物繊維などの摂取で高まるという報告が ある。よって、市販製品から摂取した水素分子の効果は、体内で産生されている量も考慮すべきという考察もあるのだという。
安全性も「信頼できる十分なデータが見当たらない」
ま た、安全性についても「信頼できる十分なデータが見当たらない」とした。メタボリック症候群のリスクを1つ以上持つカナダの男女20人に一日 1.5~2.0リットルを8週間飲ませたところ、65%にあたる13人が体調不良を経験したという実験結果もある。「水素水」との因果関係は 「possible」と判断された、とも書いている。
研究所に対し6月22日にJ-CASTニュースが今回の発表に至った経緯を取材したところ、「水素水」に関する様々な噂が飛び交い、混乱している状 況があったため、きちんと整理をして情報公開する必要があると判断し研究を進めてきた、と説明した。そこで、今回の研究結果の発表で長く続いてきた論争に ピリオドが打たれるのかと質問したところ、
「あくまで現時点までに有効性を示すデータがないため、『わかりません』ということなんですね。今でも様々な研究機関が解明を進めていますので、そうしたものも参考にすればいいと思っています」
と担当者は話していた。
ネット上では研究所の発表を見て、
「同僚が飲んだら体が錆びなくなってガンにならないとか真面目に言ってて笑えた。マルチ商法にハマってるやつと一緒」
「婆ちゃん毎日飲んでたけど去年末に63で死んだわ。癌に聞くって言われて飲んでたんだけど」
「要するにただの水だから、適量取っていれば健康にいいのは当たり前。ここが規制する際のネックになっているんだよな」
などといった感想が掲示板に出ている。