「置き配」など促進、輸送効率化図る
宅配便の再配達ゼロを目指し、宮城県、県トラック協会、佐川急便、日本郵便、ヤマト運輸が近く協定を結ぶことが10日分かった。トラック運転手の残業規制強化に伴う「2024年問題」を踏まえ、非効率な再配達の削減に官民連携で取り組む。宅配大手3社がそろって自治体と協定を結ぶのは全国で初めて。
県や宅配3社は協定に基づき(1)宅配ボックスの設置(2)玄関前や自転車かごへの「置き配」の選択(3)コンビニエンスストアや営業所での受け取り-など、再配達を減らす方法の普及啓発を進める。村井嘉浩知事も県政ラジオ番組で再配達ゼロを呼びかける予定という。
国土交通省が年2回調査する再配達率の推移はグラフの通り。新型コロナ下の外出自粛や在宅勤務の拡大で改善したが、直近の4月でも10・4%に上る。
国は再配達率を本年度内に6%とする目標を設定。通販サイトで置き配やコンビニ受け取りを選んだ消費者にポイントを付与する事業を10月に始める。今回の協定は国の動きに沿った形で、業界として2024年問題を深刻に捉えている表れともいえる。
県商工金融課は「県民に身近な再配達を切り口に物流への関心を高め、置き配の選択など一人一人の行動変容につながることを期待している」と話す。
2024年問題 トラック運転手の残業上限を年960時間とする規制が今年4月から適用されたことに伴う諸問題。運転手1人が運べる荷物量が減少することで、業界の慢性的な人手不足と相まって、物流の停滞が懸念される。運送会社の利益や運転手の収入が減るとの指摘もあり、輸送の効率化や運賃の適正化が必要となる。
業務効率化 二酸化炭素削減に向け連携 宮城県も積極関与
「再配達ゼロ」を掲げて宮城県と宅配大手3社が連携する全国初の協定が近く結ばれる。各社はライフスタイルに合わせた多様な受け取り方を既に展開しており、協定を機にさらに周知を進めたい考え。県も旗振り役として積極的に関わる方針を示す。
「ドライバーの業務効率化、二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながる」。佐川急便は再配達削減の狙いをこう語る。3社はいずれも再配達率を公表していないが、国の調査では10軒に1軒の割合で配達先が不在の現状がうかがえる。
同社は2日、自社の無料会員制ウェブサービスから置き配を選択可能にした。具体的な数字は非公表ながら、置き配を選ぶ人は「増加傾向にある」という。
日本郵便は再配達に伴うCO2排出量が国の推計で年25万4千トン(2020年度)とされたことに触れ、「社会や環境問題にも対応していくため、荷物や郵便物を便利に受け取ることができるサービスを提供している」とアピールする。
ヤマト運輸は、再配達を「サービスの一部」と位置付け、全否定は避けつつ「受け取り方の選択肢を増やして1回で受け取れるようになれば、消費者の利便性は高まる」と説明する。
同社は6月に置き配を導入。駅など仙台市内16カ所にあり、複数業者が共同で利用する宅配ロッカー「PUDO(プドー)ステーション」も活用する。
今回の協定について、佐川急便は「官民連携でこのような取り組みを実施でき、非常に心強い。3社が参画することで、より多くの人に再配達削減を意識してもらえる」と期待した。
野村総合研究所の試算では、2024年問題の影響で、30年度には東北の荷物の41%が運転手不足で運べなくなる。全国の36%を上回り、地域別で四国と並び最も厳しい予想だった。
県商工金融課は「県民生活や経済活動を支える物流の維持に向け、各社と連携しつつ、県として主導的に取り組む」と強調する。