空港の妙な愛称が次々に生まれる理由

一般的に空港の名称は地名を冠したものが多いですが、日本では、そのような名称とは別に「愛称」をもつ空港が増えています。なかには「なぜこの名前?」と思うようなものも。空港の愛称はどう決まるのでしょうか。

石見空港は「萩」を付けたほうがわかりやすい?

2018(平成30)年現在、日本における空港の数はじつに97を数えます。47都道府県中、空港がない県も10ある一方で、ひとつの県内に複数の空港が設置されているところもあります。

これだけたくさんの空港がひしめいていることもあり、特に就航路線の少ない地方空港は、より人目を引くため様々な施策を行っています。そのひとつが、愛称の工夫です。単に地名の後ろに「空港」とつけただけの空港名のほかに、愛称を制定する空港が近年相次いで登場しているのです。


「鳥取砂丘コナン空港」こと鳥取空港(画像:写真AC)。

まず、比較的古くからあるパターンとして挙げられるのが、マイナーな地名をよりわかりやすくするために、周辺や広域の地名を組み合わせた愛称です。北海道の「オホーツク紋別空港」や、島根県の「萩・石見空港」などが当てはまります。紋別空港は北海道のなかでもオホーツク海側にあること、石見空港は知名度の高い萩市の名を使い、島根県のなかでも山口県側にあることをアピールしているわけです。

次に挙げられるのは、地域名称のあとに、その地域の祭りや観光の名物、特産品を名前にするもの。たとえば徳島県の「徳島阿波おどり空港」や、島根県の「出雲縁結び空港」が挙げられます。徳島の祭りとして有名な阿波踊りはわかりやすいかもしれませんが、「出雲縁結び」は、出雲大社が縁結びの神様であることからきています。

「南セントレア市」の話はどうなった?

こうした愛称は多くの場合、空港の知名度向上や利用促進などが目的。自治体や利用促進団体、空港ビル管理会社などが協力し、一般公募などを経て選ばれるケースが多く、2000年代から事例が増えています。名づけにはいくつかのパターンがありますが、先にあげた2パターンのほか、どのようなものがあるのでしょうか。

祭りや観光の名物を愛称につけるパターンに類似して、地域になじみの深い動物や花の名前がつくパターンが挙げられます。「たんちょう釧路空港」「対馬やまねこ空港」「宮崎ブーゲンビリア空港」「五島つばき空港」などがそれです。動物や花の名前が入ることで、かわいらいしいイメージや華やかなイメージがつくのが利点といえるでしょう。「五島つばき空港」については、正式名を「福江空港」といい、長崎県五島列島の福江島にあります。先に紹介した、マイナーな地名の補完という役割もあるようです。


「たんちょう釧路空港」こと釧路空港(画像:釧路空港)。

造語の愛称もあります。中部国際空港の「セントレア」は、中部を意味する「セントラル」と、空港を意味する「エアポート」を組み合わせたもの。また、神戸空港の愛称「マリンエア」も、海の「マリン」と「エアポート」を組み合わせです。

ちなみに「セントレア」は、自治体の名前にも採用される計画がありました。愛知県美浜町と南知多町の合併に際し、町おこしの一環として「南セントレア市」という名前にする案があったのですが、最終的に見直され、合併の話も白紙に戻りました。

「おいしい空港」の意味は「食」だけにあらず

一見して「なぜ?」と思うような愛称、あるいは意味が伝わりづらいようなものもあります。

鳥取県内の「鳥取砂丘コナン空港」(鳥取市)、「米子鬼太郎空港」(境港市)は、いずれもマンガのキャラクターの名前が愛称になった例です。両空港とも、原作者が鳥取県の出身であることから名付けられたのですが、鳥取空港の場合は「鳥取砂丘」もセットの愛称が付けられています。

山形県には東根市に「おいしい山形空港」が、酒田市および鶴岡市にまたがって「おいしい庄内空港」があります。言葉はわかりやすいものの、突飛な印象を感じるかもしれません。これは、食だけでなく、祭りや温泉など、山形県の「おいしい(好ましい)」をアピールするために、2014年に2港同じタイミングで名付けられました。そのため、ロゴマークも名称と色が違うだけで、デザインはほぼおそろいです。

富山県の「富山きときと空港」も、意味が通りづらい愛称かもしれません。「きときと」とは富山の方言で、新鮮、活きがいいなどの意味があり、富山の新鮮な海産物をアピールする意図があります。その一環として、富山空港では手荷物受取所のベルトコンベアに「寿司のオブジェ」を流しています。


岡山空港は2018年3月に「岡山桃太郎空港」の愛称を決定。手荷物受取所のベルトコンベアに桃太郎が流れてくる(画像:岡山空港)。

挙げたなかには、そのインパクトから、愛称の方がむしろ有名になった空港もいくつかあります。人目を引く空港の愛称は、その立地や地元の名物を広くアピールするだけでなく、降り立った人を旅にいざなうような仕組みを持ったものもあるのです。

※記事制作協力:風来堂、加藤桐子

タイトルとURLをコピーしました