札幌市を中心とした新型コロナウイルス感染の今春の「第4波」で、クラスター(感染者集団)の発生場所がこれまでと大きく変化している。昨秋の「第3波」ではススキノの接待を伴う飲食店などでの発生が目立ったが、市内で直近1カ月に発生したクラスター35件のうち、飲食店はわずか1件。学校や病院、会社などの割合が高く、専門家は「自宅や職場での飲食で感染し、学校や社内で広がるケースが増えた」と説明。札幌市では12日から酒類提供の終日停止要請が始まるが、飲食店に特化した対策だけでは不十分との見方が強まっている。 札幌市によると、第4波の4月7日から5月4日の約1カ月に市内で発生したクラスターは35件。発生場所は「学校など」と「病院」が各31%、「会社」17%、「福祉施設」14%で、「飲食店」は3%だった。
専門家「酒類提供停止要請の効果は限定的」
第3波のピークとなった昨年11月のクラスターは56件で、このうち飲食店は20%を占め、大半がススキノのスナックなど接待を伴う店だった。学校などは16%で高校や専門学校が中心だったが、第4波では31%に上昇。このうち認定こども園と保育施設が約半数を占め、年齢の低い子どもたちに感染が広がる例が目立つ。 全道的にも同じ傾向で、クラスター全体に占める飲食店の割合は、第3波の20%から第4波では13%に減少。一方、学校などは14%から26%に上昇している。 北海道医療大の塚本容子教授(感染管理学)は、第4波で飲食店でのクラスターが減った理由について「店の対策に加え、会食の人数を4人以下にするなど市民の行動の変化が、クラスター抑止につながった」と分析する。 一方、感染力の強い変異株が広がったことで「従来株では感染しにくかった10代以下の子どもたちのクラスターが多発している」と指摘。感染経路不明の市中感染も拡大しており、「飲食店への時短や酒類提供の停止要請を中心とした現在の対策の効果は限定的。休校も視野に入れた学校での感染対策の強化が必要だ」と警戒感を強める。
家庭内感染、親の会食きっかけのパターンも
クラスター以外も含めた札幌市内の新規感染者の感染経路でも、家庭や学校など、飲食店以外の場所での感染が目立つ。4月8日から5月5日までに確認された感染者のうち、感染経路が特定できた1839人の内訳は、家庭での感染が34%と最多。会社・学校が24%で、私的な会食や訪問などの「個人活動」による感染は17%だった。 ただ、札幌市保健所は、感染者の行動歴などを聞き取る疫学調査の結果、子どもの親が会食や飲食店を訪問した際に感染し、家庭内や学校での感染拡大につながったパターンが多いと説明。「人間関係が固定されている閉鎖的な空間にウイルスが持ち込まれ、一気に広がった。人出を減らし、クラスターのきっかけをなくす意味でも飲食店への自粛要請は必要」としている。