結局2035年までの完全EV化など無理だ!ということに世界はやっと気づき始めた

ようやく目を覚ましたドイツ

写真提供: 現代ビジネス

 NHK 3月9日「EU 2035年までにエンジン車の新車販売事実上禁止 先行き不透明」で述べられているように、脱炭素を声高に叫び、エンジン車の新車販売を2035年までに事実上禁止することを目指しているEUの動きに「待った」がかかった。 【写真】環境イデオロギーが世界を破壊する、欧州の政治家も「狂っている」!?  欧州最大の自動車生産国ドイツが、二酸化炭素と水素から作る合成燃料を使用するエンジン車は認めるよう求めたのだ。  ドイツ政府の代表は「これから目指すべき方向は電気自動車だが、より多くのアプローチが必要だ」と述べており、フェラーリなどのメーカーを抱えるイタリアも難色を示していると伝えられる。確かにエンジン音の無いフェラーリは味気ない……  だが、それだけではない。ウクライナ戦争を発端として、2月24日公開「米政府が関与か? ノルドストリーム爆破疑惑のバイデンと『迷走』岸田のコンビでは日本が危うい」で述べた事件も加わって、昨年10月18日公開「本番はこれから、2023年は未曽有の食料・エネルギー危機になる?」をまさに体感しているのがドイツをはじめとする欧州各国なのだ。  ドイツは「脱原発」を強力に推進し、昨年末にはすべての原発を廃止する予定であった。しかし、最後に残った3基の稼働を4月半ばまで延長することをすでに決定している。そして、現在のエネルギー需給を考えれば、さらに稼働期間が延長される可能性が高い。  「脱炭素」が必要かどうかという根本的な議論は、2021年8月22日公開「脱炭素・EV推進、『合理的な科学的根拠がない』この方針は、もはや『宗教』だ」から1月9日公開「環境イデオロギーが世界を破壊する、欧州の政治家も『狂っている』!?」に至る多数の記事を参照いただきたい。  しかし、万が一脱炭素が必要であったとしても、国民の多大な犠牲と「効果」の度合いはきちんと検証されるべきだ。

EVに必要な電力は供給できるのか

 例えば「全面EV化したときに本当に充分な電力を供給できるのか!?」という議論はかなり以前からあった。太陽光発電などの再生可能エネルギーは、基本的にお天気任せであまり役に立たない。しかも、はげ山を生み出したり、廃棄太陽光パネルが環境汚染を引き起こしたりする。  ドイツが原発の稼働延長を行ったのも「現在必要な電力」の供給でさえ危ういということを示している。また、日本でも電力需給は逼迫してピーク時の節電が叫ばれている。  そのように「電力が不足」しているのにも関わらず、「EV化推進で電力の使用をさらに増やす」愚かさにドイツもようやく気付き始めたのであろう。  例え2035年までに全面EV化したとしても、そのための十分な電力を供給できるとは考えにくい。結局、この「妄想」が妄想であることに早く気が付いた国(企業)が、次の時代をリードする。  その点で、2月27日公開「日本はこのままトヨタを失ってしまってもいいのか!?」で述べたトヨタは、一貫して「全面EV化の愚かさ」を勇気をもって主張してきた気骨ある企業だ。  さらにドイツが「二酸化炭素と水素から作る合成燃料」で動くエンジンを主張する前に、2021年5月18日公開「水素エンジンはハイブリッドのように大ブレイクするか?」で述べた、より合理的と考えられる「水素」を燃料として使用するエンジンの開発に取り組み、実用化も視野に入っている。  その点で3月5日公開の「楽天、ユニクロ、ホンダ……英語社内公用語化を進めた企業の末路」で登場し、昨年9月15日公開「ホンダが抱える『全面EV化』の巨大なリスク――『第2の日産』になってしまうのか」で触れたホンダの将来が心配だ。二輪車事業は好調だから、「原点」の二輪専業メーカーに戻ってしまうのであろうか? 

ディーゼル車の二の舞か

 このような「全面EV化」の悲惨な状況を見ていて思いだすのは、かつて「環境車」として称賛された「ディーゼル車」である。  今では信じられないが、当時(少なくともドイツなどの欧州諸国で)は「環境車」としてもてはやされていたのだ。  だが、当時から「ディ―ゼル車が本当に環境に優しいのか?」という疑問は提示されていた。例えば東京都環境局の「ディーゼル車NO作戦とは」で解説されている、ディーゼル車に対する「環境を守るための」規制である。  この作戦は、1999年4月の石原慎太郎氏の都知事就任直後の8月に始まった。ディーゼル車の真っ黒いススの入ったペットボトルを記者会見で振り回し、「こんなものをみんな吸っているんだよ!」と述べたのだ。  ところがドイツを中心とした国々では、詳細なデータを示して「ディーゼル車は環境に優しい」という主張を続けた。  だが結局、2017年8月7日東洋経済「『ディーゼル神話』崩壊、ドイツがEVへ急転換」という事態に陥った。  2015年秋に発覚した独フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンにおける排ガス不正では、規制されている窒素酸化物(NOx)の排出量を、室内での測定試験時のみ抑える違法なソフトウエアを搭載していた。その結果、路上走行では最大で試験値の40倍ものNOxを放出していたのだ。  その後の2年弱の間に他社での不正も多数発覚し「ディーゼル車は環境に優しい」という主張は、ただ数値を捏造した結果に基づく虚構であったことがはっきりした。  したがって、ドイツなどでのEV化は「ディーゼル車での不正」を「覆い隠す」ために急遽推進されたものと考えられる。  そもそも、ドイツがディーゼル車を環境車として推進したのは、ハイブリッドなどの技術ではトヨタなどの日本勢に追いつけないからだと思われる。だから、消去法でEV化推進となったわけだから、環境車としての合理性など真剣に考えていなかったはずだ。  したがって、「電力不足」などの事態に直面して、ドイツが「

EVは本当に環境に優しいのか

 「EVが環境に優しい」という主張の根拠は、概ね「EVは排気ガスを出さない」という小学生にでもよくわかる点にある。だが、わかりやすいからと言って正しいわけではない。  環境保護活動家がよく犯す間違いは、「希少動物が絶滅に瀕しているから、その天敵である害獣を駆除する」というやり方である。目の前だけを見ていれば確かに正しいが、「天敵」も、自然の生態系の一つであるということを全く忘れた議論である。  実際、「天敵」を駆除することにより自然の生態系が壊れ、森が瀕死状態に陥り、希少動物にまで被害を与えるという失敗例は少なくない。ほとんどの「環境活動家」の主張は、目の前の木だけを見て森を見ない視野の狭いものだ。  同じように、小学生はEVから排気ガスが出ないことはわかっても、使用される電力がどのように発電され、生産工程でどのくらい二酸化炭素を排出するのかを理解するのは困難だ。また、使用済みのEV用電池が「危険廃棄物」であり、どのように環境を汚染するのかということもである。  事実、EVの生産や必要な電力を発電するときに排出される二酸化炭素のトータルは、ガソリン車よりも多いという研究結果は少なくない。例えば、世界の発電の概ね4分の3は、石炭、LNG、原油などの化石燃料で行われている。その他の非化石燃料による発電は、原子力を含めても全体の4分の1程度しかない。  これでは、EVを普及させても「社会全体の二酸化炭素排出量」はあまり減らすことができない(むしろ増えるかもしれない)。したがって、EVを推進するということは「自分の家の玄関先のごみを隣家の前に掃き出して、うちの玄関がきれいになった」と言っているのとほぼ同じである。  ディーゼル車の時のように、目の前の数値を捏造しているわけではないが、「社会全体での二酸化炭素の排出量増加」という「不都合な真実」が明らかになれば、EV車もディーゼル車と同じ運命をたどるかもしれない。

「危険廃棄物問題」も

 しかも、太陽光パネルという「危険廃棄物」の問題がクローズアップされているのと同様に、EV電池という危険廃棄物の問題もEV車が増えることによって今後無視できなくなるであろう。  ガソリン車のエンジンにはそのような問題は無く、スクラップにすればよいだけだから、「EV車は、ガソリン車には無かった新たな環境問題を引き起こしている」ということになる。  「社会全体の負荷」を考えれば、「EV車は環境に悪い」というディーゼル車と同じような(データ上の)「不都合な真実」が明らかになるのだろうか。  さらに、EV電池に必要なレア・アースなどの希少金属は、採掘・抽出で著しい環境破壊を起こす。希少金属の産地が中国など特定の国に偏っているのは、資源が偏在していることもあるが、それらの金属を採掘・抽出する過程で環境破壊を引き起こすから環境規制が緩い国でないと生産が難しいという点にもある。  生産地で環境破壊を起こしているのに、(希少金属を使用した)EVは環境に優しいなどと主張するのは滑稽にさえ思える。

脱炭素という岩盤利権を打破すべし

 このように、「脱炭素」や「全面EV化」の不都合な真実が次々と明らかになっているのに、政府、企業、さらにはオールドメディアの論調は「脱炭素礼賛、EV化すべし」から変化が無い。  彼らが全くこの状況に気づいていないとは思えないが、たぶん脱炭素やEV化はすでに巨大利権になっているのだろう。今さら「あれは間違いでした」と言い出せないでいるに違いない。  だが、いくら「強弁」しても「不都合な真実」を変えることはできない。いずれEV産業は、現在話題になっているシリコンバレーバンクの破綻のような厳しい状況に陥いるのではないだろうか。冒頭のドイツの状況を見ると、そのXデーはそれほど遠い将来のことではないように思える。  改めて、前記「日本はこのままトヨタを失ってしまってもいいのか!?」で述べた、トヨタの「気骨ある戦略」の正しさがクロースアップされるであろう。

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