ガソリン高騰で燃費の良いクルマが注目されるも…
ガソリン価格が高騰している昨今、クルマの燃費性能がこれまで以上に注目されています。
一方で、電気自動車(EV)のように、そもそも燃料を消費しないクルマも増えつつあります。
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一時期はし烈な「燃費競争」もあったなかで、果たして今後クルマの燃費性能はどのようになっていくのでしょうか。 © くるまのニュース 提供 メーター上では「40km/L」を超えることもあるトヨタ「ヤリス」 この先の燃費性能はどうなる? メーター上では「40km/L」を超えることもあるトヨタ「ヤリス」 この先の燃費性能はどうなる?
ガソリン価格の高騰が続き、現在ではおよそ7年ぶりの高値水準となっています。
その背景には、世界的に新型コロナウイルス感染症からの回復基調が高まっていることで、石油需要が増加していることや、円安によって輸入価格が相対的に高まっていることなどが挙げられます。
いずれにせよ、多くのユーザーにとってガソリン価格の高騰は決してうれしいことではありません。
もし、燃費が10km/Lのクルマで月間1000km走行するユーザーの場合、ガソリン価格が10円上がると、月々のガソリン代は1000円増加し、年間では1万2000円増加する計算になります。
全国のレギュラーガソリンの平均価格はリッター約167.3円(2021年10月25日現在/資源エネルギー庁公表)となっており、1年前から比べると、およそ30円近い値上げとなっています。
こうなると、一般ユーザーはもちろん、ガソリンや軽油を使用する事業者、例えばバスなどの公共交通機関への影響も少なくありません。
そうしたなかで、燃料価格が高騰すればするほど、より燃費性能の高いクルマに注目が集まります。
もし燃費が20km/Lのクルマであれば、先ほど例に挙げた10km/Lに比べて単純計算でガソリン代は半分となり、月間1000km走行する場合では、ガソリン価格がリッター160円なら月々8000円ものコスト削減につながるからです。
おおむね2010年ころまでのクルマは、それほど排気量の大きいクルマでなくても、実燃費が10km/L程度ということは珍しくありませんでした。
そのため、その時代のクルマに乗っている人が、現在の軽自動車やコンパクトカーなどに乗り換えれば、前述の例のように、燃費が2倍になるケースもあります。
しかし、実燃費が20km/Lのクルマが珍しくなくなった昨今、例えば10年、20年後には実燃費が2倍、つまり40km/Lのクルマが多く登場しているのでしょうか。
正直なところ、筆者(Peacock Blue K.K.洋明)としてはそれはかなり懐疑的です。
もちろん、いわゆる「燃費スペシャル」というような燃費性能に特化したクルマあるいはグレードでは、実燃費が40km/Lということもないではないと思われますが、多くのクルマがそうなることはないと考えています。
筆者の予測では、今後10年の間に全体的な燃費性能は向上していくと思われますが、ガソリン車およびハイブリッド車に関していえば、実燃費が30km/L程度で頭打ちになるのではないかと考えています。
実燃費が30km/Lというクルマは、現在でもまったくないわけではありません。
例えば、2021年現在、もっともカタログ燃費(WLTCモード)が良いクルマはトヨタ「ヤリス(ハイブリッド車)」の36.0km/Lで、次点が同じくトヨタの「アクア」の35.8km/Lとなっています。
この2台は、走行条件などが整えば、実燃費で30km/L超えも目指すことができるほど燃費性能に優れたクルマです。
ヤリスやアクアと比較されることの多い、ホンダ「フィット(ハイブリッド車)」や日産「ノート」のカタログ燃費は、それぞれ29.4km/Lと29.5km/Lという点を見ると、いかにトヨタ車の燃費性能が優れているかということがわかります。
しかし、逆にいえば、ホンダと日産はすでに燃費競争から降りているという見方をすることもできます。
仮に、カタログ燃費通りの実燃費が出るとして、ヤリスとフィットやノートの燃費差は6km/L程度です。
月間1000km走行する場合、ガソリン価格がリッター160円なら、月々のガソリン代はヤリスが約4444円、フィットが約5442円、ノートが約5424円です。
もちろん、月間走行距離が少なくなればなるほど、この差はさらに小さくなります。
月1000円程度の差をどう感じるかは人それぞれですが、もしデザインや使い勝手など燃費性能以外の部分で魅力を感じるところがあるのであれば、フィットやノートを選ぶ人も少なくないのではないでしょうか。
例えば、ノートのマーケティング活動を見ると、EVのようなスムーズな加速感を強く押し出しており、燃費性能が前面に出てくることはありません。
カタログ燃費がヤリスやアクアに比べて劣っているというのも背景にあると思われますが、燃料代を極力抑えたいユーザーに対しては、EVの「リーフ」がラインナップしていると理由も大きいでしょう。
つまり、そもそもガソリンを一切使用しない、EVの普及が進むことによって、0.1km/L単位の燃費競争はほとんど無意味なものになりつつあるというわけです。
ガソリン車のカタログ燃費は30km/L程度で頭打ちになる理由
ある自動車メーカーの技術者が「既存のガソリンエンジンがこれ以上大きく進化する余地は少ない」と漏らすように、乾いた雑巾をさらに絞るような努力で燃費を改善するよりも、それ以外の部分へと投資したほうが合理的という時代になりつつあります。
もちろん、既存のガソリンエンジンも、徹底して研究を重ねれば、燃費性能が大きく改善する可能性はゼロではありません。
しかし、同じ開発リソースを使うのであれば、EVを始めとする電動車のほうが技術改善の余地が多くあるほか、既存のガソリン車やハイブリッド車でも、デザインや安全装備への投資のほうがリターンは大きいという発想になっているのだと考えられます。
各国政府の政策もあり、今後電動化が進むのはほとんど自明のこととなりつつあります。 © くるまのニュース 提供 トヨタが展開するEVブランド「bZシリーズ」となる「bZ4X」 今後は「燃費競争」から「電動化競争」に曲面が変わっている トヨタが展開するEVブランド「bZシリーズ」となる「bZ4X」 今後は「燃費競争」から「電動化競争」に曲面が変わっている
ガソリン車がある日突然消えることはないと思われますが、むしろガソリン車らしいフィーリングを売りにしたスポーツカーや、充電環境に乏しい場所でも走破できるようなタフなクロスカントリー車などへと集約されていき、現在のコンパクトカーや軽自動車が担っているポジションは、ほとんどEVに置き換わることが予測されます。
そのような未来が訪れるのが少なくとも20年、30年後のことと思われますが、いずれにせよ、そうした未来が予測されるなかでは、燃費競争というのはほとんど意味をなしません。
また、自動車メーカー自体がそこに投資する可能性も低いことから、既存のガソリン車については、飛躍的な燃費向上を見込むことは難しいのではないかと考えられます。
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今回述べたのは自動車メーカー側の視点が中心ですが、同様に、ユーザー側の視点も燃費重視から個性や使い勝手重視へと変化しつつあるといわれています。
燃費が良いに越したことはない、というのはどのユーザーも考えることですが、単にコスト面のみを考えるのであれば、燃費は悪くても価格の安い中古車を選ぶという選択肢もあります。
そのように考えると、燃費競争が落ち着いた背景には、新車を購入するユーザーのなかに、燃費が良いに越したことはないが、使い勝手やデザインなども重視したいと考えている人が増えてきているいえるのかもしれません。