春の風物詩・黄砂
黄砂という現象は、春になって中国大陸が乾燥することで、風によって上空高く巻き上げられた砂塵が、上空を流れる偏西風に乗って東進し、日本付近で下降して地表面付近に達して発生します(図1)。 図1 黄砂の説明図
黄砂が11~12月に日本へ来ることがないというわけではありませんが、何といっても春先に一番多くやってきます(図2)。 図2 月別黄砂観測日数平年値
そして、中国内陸部の開発が進むにつれ、砂漠化がすすんでいることなどから、黄砂は増加傾向にあります。
現在、中国東北区では多量の砂塵が巻き上げられ、黄砂が観測されています(図3)。 図3 黄砂の観測(4月4日0~15時)
この砂塵は、4月5日午後には、北日本から東日本を中心に地表付近に落下する見込みで、視程が10キロ未満、所によっては視程が5キロ未満の黄砂となる見込みです(図4)。 図4 平成31年(2019年)4月5日21時の黄砂予測図(気象庁発表)
気象庁では全般気象情報を4月4日16時に発表し、屋外の洗濯物や車などに黄砂が付着することへの対策を呼び掛けています。
また、視程が5キロ未満となった場合は、交通への障害が発生するおそれがあるとして警戒を呼び掛けています。
危険なPM2.5
中国大陸から飛来するのは黄砂だけではありません。
自然起源で目で見える黄砂より粒径が小さく、自然起源だけでなく人工起源のものも多くて目に見えない2.5マイクロ以下の非常に小さい粒子、PM2.5もやってきます。
このPM2.5は、風物詩というわけにはゆきません。
非常に粒径が小さいPM2.5は、その小ささのために肺の奥深くまで入り込み、なかなか体外に排出されませんので、ぜんそくや気管支などの呼吸器系の疾患を引き起こすとされています。
このため、中国の経済発展に伴う大気汚染によるPM2.5の増加は、黄砂のように日本へやってきますので、日本にとって対岸の火事ではありません。
PM2.5が襲来するのは春とは限りません。
冬季、北京などの大都市では石炭を使った暖房が行われますので、街中にPM2.5が充満し、その一部が上空に巻き上げられることから、日本にくるPM2.5は、冬から春が多くなっています。
黄砂が多いとPM2.5も多いというわけではありませんが、どちらも日本上空に運ばれた後、地表付近に降りてくることから、日本付近が下降流になっているときに発生します。
具体的には移動性高気圧が通過して下降流になっているときです(図5)。 図5 予想天気図(4月6日9時の予報)
今週のPM2.5
九州大学の竹村俊彦教授を中心としたSPRINTARS開発チーム・ウェザーマップの予想によると、黄砂と前後して、PM2.5も日本にやってきます(図6)。 図6 PM2.5の予想(4月5日18時の予想)
この図で、「極めて多い」は「非常に多いの閾値の2倍」、「非常に多い」は「注意喚起レベル」、「多い」は「日本の環境基準程度」、「やや多い」は「大気が少しかすむ程度」です。
つまり、中国大陸のPM2.5の汚染とは規模が違いますが、日本列島でも広い範囲で「日本の環境基準」以上の汚染が予想されています。
そして、その3日後には、もっと濃い濃度のPM2.5がやってくる予想です(図7)。 図7 PM2.5の予想(4月8日9時の予想)
黄砂とPM2.5、成因もその振る舞いも大きく違いますが、情報入手に努め、健康に留意して春を乗り切りたいと思います。
図1、図2、図3、図4、図5の出典:気象庁ホームページ。
図6、図7の出典:SPRINTARS開発チーム・ウェザーマップ提供