5~11歳を対象にした新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種率が、東北の主要16市(人口10万以上)のうち14市で30%以上と全国平均(20・1%)を大きく上回っていることが、河北新報社の取材で4日までに分かった。大半が30~40%台だが、一関市が唯一、50%を超え、仙台市は20%台にとどまるなど自治体間で差もあった。
一関50%超、仙台20%台
各市の接種状況は表の通り。母数の対象者数は市ごとに集計方法が異なり、接種率を算定した時期も最大3日の幅がある。会津若松市は「現状では努力義務ではない」として接種率を公表していない。
一関市は12歳以上の3回目接種率も88・9%(8月31日現在)と高い。市の担当者は「大人が接種すれば『子どもにも接種させたい』との意識が働くのでは」とみる。全県の3回目接種率(同)が全国1、2位の秋田、山形両県の3市も40%を超えた。
仙台市の5~11歳の2回目接種率は全国平均をわずかに上回るが、宮城県平均(27・4%)に届かない。市の担当者は「接種を迷っている人が多い」と受け止める。
「努力義務」近く閣議決定へ
5~11歳へのワクチン接種は2月に始まり、予防接種法の「努力義務」を適用する政令が近く閣議決定される見通し。日本小児科学会は8月、「流行『第7波』で子どもの重症患者が増えている」として、5~17歳への接種を推奨する見解を表明した。
子どもの接種に対しては医師の間でも慎重な対応を求める声がある。全国の医師319人ら約1000人の医療従事者でつくる「全国有志医師の会」は8月、小児へのワクチン接種の即時中止を求める緊急声明を出した。
声明では(1)若年層は感染しても重症化しにくい(2)感染拡大中のオミクロン株変異体でもほとんどが軽症(3)心筋炎など重篤な副反応の報告が多い-などの理由を挙げ、子どもに対する接種の努力義務適用に反対している。
小児科医「データ蓄積、積極的に勧められる」
子どもへの新型コロナワクチン接種は医療機関側も手探りで進める。
仙台市宮城野区の永井小児科医院は毎週火、土曜に5~11歳を対象に接種を実施。小児用のワクチンは1瓶で10人分を賄うため、保護者らと日程を調整して廃棄ロス防止に努めている。
接種が本格化した3~5月は1日30人に接種することもあった。ここ数カ月は1日10~20人ほどに落ち着いている。
永井幸夫院長は「接種開始当初は『大丈夫なのか』と問われても、確証を持って返事できなかった。この半年間にデータを蓄積し、接種後の子どもたちを見てきた経験から、今は積極的に勧められる」と話す。
接種をためらう保護者はなお多いが、永井院長は「接種が『努力義務』になれば行政や小児科医が積極的に働きかけていくので、希望者は増えるのではないか」とみる。