3年内定着率が100%の会社の中で東京建物が最も平均年収が高く総合職で1389万円に達する。写真は本社ビル (編集部撮影)
コロナ禍で就活が一変した2021年卒の状況を目の当たりにした、今の大学4年生や大学院1年生の2022年卒は、不安な中で就職活動をスタートさせたことだろう。
2021年も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されたが、採用活動は中断することなく進んだ。採用会社はWebテストやオンライン面接を活用したことにより、就活生が移動することなく自宅で就活を進められることが大きい。また昨年中止となったグループディスカッションやグループワークもオンラインでの実施が増え、コロナ前の採用プロセスに戻りつつある。
新型コロナウイルスで甚大な影響を受けた業種もあるが、就職ナビサイト各社が調査した10月時点の就職内定率はコロナ前の水準になっている。
新卒3年後離職率は低下
一方、就職後の離職率は低下している。厚生労働省が2021年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、新規大卒就職者の就職3年以内離職率は31.2%と、前年に比べ1.6ポイント低下した。この調査にはコロナ禍の2020年4月から2021年3月の離職状況が含まれており、コロナ禍で例年より離職率が低くなったことがうかがえる。
この新卒3年後離職率は、企業研究する際には注目度の高いデータの1つで、若手にとって働きやすい環境かを知る指標ともいえる。チェックする際には業種別、規模別でみてほしい。業種別では、新卒3年後離職率が10%台の電気・ガス・熱供給・水道業(平均11.1%)、鉱業、採石業、砂利採取業(同11.5%)から、50%を超す宿泊業・飲食サービス業(同51.5%)、その他(同61.3%)まで、大きな開きがある。
従業員規模別では、規模が大きいほど新卒3年後離職率が低くなる傾向がある。5人未満の56.3%と半数を超す一方、1000人以上では24.7%と5人未満と比べ新卒3年後離職率は半減する。
それでは個別会社の離職率はどうなっているのか、『就職四季報2023年版』(総合版)では、3年後離職率を掲載しているが、今回離職率の低い会社すなわち定着率の高い会社を集計。そこから年収の高い会社を抽出し、「給料が高く新卒が辞めない会社」ランキングとして紹介したい。
なお、ランキングは2018年の入社人数が10人以上で、かつ平均年収800万円以上の会社を対象とし、定着率(定着率が同数の場合は年収)の順にランキングしている。
2年連続定着率100%の会社は5社
定着率100%の会社は15社。昨年度に比べ10社減少した。タクマはボイラー製造大手で、ゴミ焼却炉や水処理装置も手掛けている。加賀電子は電子部品商社の大手で、受託製造(EMS)も展開している。ダイヘンは独立系の電力機器メーカーで、自動車製造用のアーク溶接ロボットでは世界大手だ。
2年連続定着率100%の会社は、5社(NTT都市開発、愛知製鋼、三井不動産、東京ドーム、東京建物)と昨年より2社減少した。
ランキング掲載会社を業種別で見ると、建設26社(29位竹中工務店、34位鹿島、49位清水建設、51位千代田化工建設、55位横河ブリッジホールディングスほか)、化学21社(19位東ソー、28位宇部興産、37位住友化学、60位富士フイルム、63位DICほか)、商社・卸売業18社(1位加賀電子、20位住友商事、44位三井物産、51位伊藤忠エネクス、62位三菱商事)と続く。3年連続でこの3業種がトップ3を占めており、定着率の高い業界といえる。
ランキングを見る際には、入社人数にも注意してほしい。18年に1202人が入社した194位の日本製鉄は離職者が1人で0.1%に満たない変動幅だが、トップタイの東宝や163位にランクインしている日鉄興和不動産、アジレント・テクノロジー、JECCは離職者が1人で10%変動する。複数年の離職率の傾向を確認してほしい。
ランキングを眺めて、志望業種の会社や知らない会社があれば積極的に調べてみることだ。業界研究や企業研究のきっかけとしては十分だろう。広報解禁まで残すところ3カ月。冬のインターンシップも開催され、企業研究をする時間も思ったほど取れない。『就職四季報』掲載のデータを活用し効率的に会社研究を進めてほしい。