◆今、日本の企業全体に「ポエム」が溢れている!

 夢、仲間、絆、希望、笑顔、理想の自分――。口にするのが恥ずかしいような言葉を多用した、こうしたフレーズが日本社会に増殖している。そして、そんな文章を、近年“ポエム”と呼ぶ風潮がある。
 この現象、実は企業にも及んでいることをご存じだろうか。例えば、NHKで放送され一躍有名になった「居酒屋甲子園」。全国の居酒屋店員が、仲間との友情、夢を舞台上で発表するこの大会が取り上げられ、「妙にポエム調の言葉を絶叫していてキモい」「ポエムのような美辞麗句や仲間との連帯感で過酷な労働条件から目を逸らし、社員を洗脳しようとしている」などと批判され、論争を呼んだ。
 ブラック企業に限らず、“ポエムな言葉”が盛り込まれた社歌を歌いながら体操したり、毎朝、社是を大声で斉唱したり、社員に駅前清掃を強要する企業も少なくない。こうした独自の規定を義務づけ、社員の労働意欲を引き出し洗脳しようとする企業を「ポエム化する日本企業」と広く定義した場合、企業ではどれほど“ポエム化”が進んでいるのか。20~50代の男性サラリーマン200人にアンケートをとったところ、「“ポエム”がある」と答えたのは14%だった。
 だが、『ポエムに万歳!』の著者でコラムニストの小田嶋隆氏は、「日本企業には昔からポエムな文脈が根づいている」と語る。
「多くの企業にある社是や社訓、社歌、標語なども、考えればポエムみたいなものですよね。昔からある日本企業の愛社精神とポエムって非常に似ているんです」
 認識こそ低いが、日本企業は“ポエム”に侵されている可能性がある。今回SPA!編集部が取材したところ、ブラックな業界だけでなく、自動車メーカーや不動産、金融など、ありとあらゆる業界で“広義のポエム”があることがわかった。次回から、ポエム化する日本企業の実態を紹介しよう。
⇒【次回】「笑顔と明るさを強要する職場にウンザリ…うつ病にかかり退職へ」http://nikkan-spa.jp/617283
【小田嶋 隆氏】
コラムニスト。日経ビジネスオンライン「ア・ピース・オブ・警句」をはじめ、多数連載を持つ。著書は『ポエムに万歳!』『場末の文体論』など多数

タイトルとURLをコピーしました