2011年8月、30年ぶりにリニューアルしたサンシャインシティの「サンシャイン水族館」が好調だ。来場者は12月までの4カ月間で100万人を突破した。リニューアル前の年間約90万人と比べても、その盛況ぶりは目覚ましいものがある。
サンシャイン水族館は、東京・池袋駅から10分弱。サンシャインシティの10階建てのビルの屋上に1978年、「サンシャイン国際水族館」としてオープン。八丈島沖の海水を地下の貯水槽に蓄え、地上40メートルにあるタンクに揚げて水槽へ流している。水族館の総水量は約700トン。人気のマンボウのほか、イグアナやエリマキキツネザルなど陸上の動物も展示して独自色を出してきた。
しかし、開館から32年がたち設備が老朽化した。通常は、収入減や生き物の管理を考慮して休業せず、部分営業を続けるのだが、同水族館は1年休業。30億円を投じて全面リニューアルに踏み切った。
その選択について、コミュニケーション部の宮島長清さんは「過去にも部分リニューアルを行ったが、水族館としての“変わった感”を出しにくいため、いっそ全面という社長の決断がきっかけでした」という。近年の入場者数は安定しているものの、最盛期からみればおよそ半分。「入場者数を増やすという狙いがありました」(同)
リニューアル後の集客策として着目したのは、平日または夜の時間帯の大人の客。「実は水族館は、大人の来場者が7-8割という大人の施設。特にサンシャインはその傾向が強い。そこを掘り下げていけば新たな客層が掘り起こせると考えたのです」(宮島さん)。そこで平日と夕方以降の閑散期に若い女性のグループ客を呼ぶことを想定し、「大人も満足する水族館」作りが始まった。
まず、OLが会社帰りに気軽に立ち寄れるよう、4-10月の営業時間を夜8時まで延長。屋外エリアのカフェではアルコールを提供した。これにより、仕事帰りに水槽を見ながら“癒やされる”客が増えた。
また物販では、オリジナル商品の投入に力を入れた。ここでしか手に入らないオリジナルフィギュアを作ったのだ。展示も、「生態を見せる展示方法を採用しました。その生き物がどんな行動をとるのか、それを見せるにはどんな展示があるのか、さまざまな工夫を施しました」。頭上のドーナツ型水槽をアシカが泳ぎ回る、人気の「サンシャインアクアリング」もその一つだ。
これらのリニューアルを支えたのは、各部署から1-2人が参加した全社横断プロジェクト「すばらしい水族館を皆で創ろう委員会」、通称「すば水」だ。
「“笑顔で殴り合える”を合言葉に全社一丸で取り組んだことが、全面リニューアルを成功させたと思います」と宮島さんは振り返る。 (村上信夫)