《ジャニーズ性加害》藤島ジュリー社長が被害男性と直接面会…そのとき彼女が語った「謝罪の言葉」とは

〈「あ。僕だよ。ジャニーだよ」といきなり電話が…カウアン・オカモトが明かす“異例の初対面”《ジャニーズ性加害》〉 から続く 【画像】ジャニーズJr.たちが使っていたベッドルームを見る  故・ジャニー喜多川氏による性加害を実名・顔出しで告発したカウアン・オカモト氏。その勇気ある行動は、日本社会の巨大な「山」を動かした。ここでは、オカモト氏の著書 『ユー。ジャニーズの性加害を告発して』 (文藝春秋)を一部抜粋して紹介する。  2023年4月、日本外国特派員協会で記者会見を開いたオカモト氏。実はその前にジャニーズ事務所の現社長・藤島ジュリー氏サイドから連絡があり、対面で話し合っていた。そのとき、ジュリー氏が語ったことは――。(全2回の2回目/ 最初から読む ) ◆◆◆  まだ話し足りないような気もしたし、がっつり話し切れたという思いもあった。  ひとつ言えるのは、すごく自由な場だった、ということだ。  会見に来てくれた多くの記者たちは「どんな爆弾が落とされるんだろう」と思いながら聞いていただろうし、僕の口から何が発せられるのか、想像できなかったのではないだろうか。  確かに、会見には、誰かを糾弾するためだったり、誰かが弁明をするためだったり、「これを聞くのが目的だ」というものもあると思う。でも今回の会見はちょっと違った。ゴールがない中、みんなで素の状態で作り上げた会見、という感じがした。

世界中のメディアが報道

 終わって控室に戻ると、何人かの記者さんと挨拶を交わし、取材の約束をした。事前にDMで連絡を取り合っていた人たちだ。控室の外にも何人か待ってくれている記者さんがいて、名刺をもらって、その後、取材を受けた人もいる。  FCCJが入っているビルの外に出た瞬間、テレビのディレクターに直撃取材もされた。ちょっと驚いたけれど、真剣に話をさせてもらった。サングラスをかけたままだったが。 〈元ジャニーズ「性的被害受けた」 カウアン・オカモトさんが会見〉  会見中、すでに会見のことがニュースになっていた。最初に報じたのは共同通信だった。正直言うと共同通信がどんなメディアなのか知らなかったけれど、全国各地の契約を結んでいる新聞社に記事を配信している会社で、そのおかげで日本全国のメディアが会見の記事をネットで次々に出していった。  翌日の朝刊では朝日新聞、読売新聞、毎日新聞など大手紙もこぞって報じていた。NHKも翌日の夕方のニュースで会見の内容を伝えていた。  朝日新聞は4月15日の朝刊の社説で〈ジャニーズ「性被害」検証が必要だ〉と書いていた。NHKと朝日新聞からは、その後、個別の取材も受けた。

 イギリスのBBCやガーディアン、アメリカのニューヨーク・タイムズ、AP通信、さらには台湾、タイ、インドネシアなどアジア各国のニュースサイト、そしてブラジル……文字通り、世界中で報じられていた。

大きかったと思う存在

 個人的に大きかったと思うのが、YouTuberたちの存在だ。  テレビでは伝えにくい問題でも、その人が「面白い!」「伝えるべきだ」と思ったことを、彼らはしっかりとニュースにしてくれる。ジャニーズ事務所への“忖度”とか、YouTuberたちには1ミリも関係ない。ほんの10年前だったら、こんなことはなかったかもしれない。今回は、このネット中心の社会がいい方に働いたと思う。  僕自身のSNSへの反応も大きかった。それまではジャニーズファンからは「ジャニーズを潰すのか!」みたいな批判が多かった。「売名」「噓つき」。そんな言葉を投げかけられることもあった。でも会見をしたことで、「勇気を出して話をしたカウアンを支えよう」という応援の声も非常に多く届くようになった。  もちろんこの問題については、いろんな見方があっていい。みんながみんな一方だけを応援するのは不自然だ。多くの人がこの問題を考えるきっかけとなったこと、それ自体が大きな進展だったと考えている。  ついに、山が動いたのだ。

ジュリー氏の謝罪会見

 2023年5月14日夜、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が、ジャニーさんの性加害問題について、本人が出演する動画と、説明文書を公開した。  BBCが3月にドキュメンタリーを放送して以来、ジュリーさんが世間に向かって見解を発表するのは、初めてのことだ。動画の中で、黒のスーツ、白いブラウスという、謝罪会見に出るときのような地味な格好で、ジュリーさんは頭を下げた。 「この度は、創業者ジャニー喜多川の性加害問題について世の中を大きくお騒がせしておりますこと、心よりお詫び申し上げます。何よりもまず、被害を訴えられている方々に対して深く、深くお詫び申し上げます。そして関係者の方々、ファンの皆さまに大きな失望とご不安を与えてしまいましたこと、重ねてお詫び申し上げます」  ジュリーさんはこれまで公の場に姿を現したことはほとんどない。そのジュリーさんが、動画とはいえ、世間に顔を出して喋るのがとてもレアなことだというのは、僕にもわかった。

知らなかったではすまされない

 そして、性加害問題については文書で説明された。一問一答形式になっているこの文書には僕の名前も載っていた。 ――BBCの番組報道、またカウアン・オカモトさんの告発について、どのように受け止めているのか? 「事実であるとすれば、まず被害を訴えておられる方々に対してどのように向き合うべきか、また事務所の存続さえ問われる、極めて深刻な問題だと受け止めました。あらためて事実確認をしっかりと行い、真摯に対応しなければならないと思いました」 ――BBCの番組報道、またカウアン・オカモトさんの告発は事実か? 「当然のことながら問題がなかったとは一切思っておりません。加えて会社としても、私個人としても、そのような行為自体は決して許されることではないと考えております。  一方で、当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の2次被害についても慎重に配慮しなければならないことから、この点につきましてはどうかご理解いただきたく存じます」  性加害が事実かどうかについては、“認める”という言葉はなかった。会社の社長という立場であり、ジャニーズのタレントが契約している、たくさんのスポンサーに対するスタンスもあると思う。 ――ジャニー喜多川氏の性加害を事務所、またジュリー社長は知らなかったのか? 「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした。このことを説明する上では、当時のジャニーズ事務所がどのような意思決定で運営されていたかについて、ご説明する必要があると思います。  週刊文春から取材のあった1999年の時点で、私は取締役という立場ではありましたが、長らくジャニーズ事務所は、タレントのプロデュースをジャニー喜多川、会社運営の全権をメリー喜多川が担い、この2人だけであらゆることを決定していました。情けないことに、この2人以外は私を含め、任された役割以外の会社管理・運営に対する発言は、できない状況でした」

実はジュリー氏と対面していた

 実はこの約2週間前、ジュリーさんサイドから連絡があり、2時間ほど対面で話し合った。ジュリーさんと会うのはジュニア時代を含めて初めてだし、どんな人なのだろう、どんな思いでいるのだろう、嘘をつかれたらわかるだろうし、そんなことになったら嫌だな、と思っていた。  実際に会うジュリーさんは、なにか、皇族のような品のある雰囲気をまといつつ、かわいらしさもある人だった。そのジュリーさんは僕に謝った。 「私は本当に知らなかったの。本当なのね……。申し訳ない」  さすがに彼女も、これまで出てきている様々な証言や証拠を見て、ショックを受けていたのだと思う。 「でも、私にも守らなければならないものがある。そして傷ついてほしくない人たちがいる」  事務所の現役のアイドルの中には、ジャニーさんからの行為を受けていない人もいるだろう。 「本気で、みんな、されてないって言うのよ。でもカウアンが一番わかると思うんだけど、されてても言いたくないという気持ちもあるから、そこを掘り下げたくない」  その言葉はすごくリアルな気持ちとして伝わった。

カウアン氏が伝えたこと

 一方で、僕もこう伝えた。 「ジュリーさんは顔を出して、説明した方がいいと思いますよ」  それから2週間後、ジュリーさんは顔を出して謝った。歴史的瞬間だ。大きな一歩だと思った。そしてこれから事務所が生まれかわることによって、被害者たちの気持ちも少しずついい方に向かうことを心から願っている。

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