オイスターバーを運営するゼネラル・オイスター(東京)の子会社「ジーオー・ファーム」(沖縄県久米島町)は4日、カキの完全陸上養殖に世界で初めて成功したと発表した。海洋深層水を活用した特許技術で浄化し、ウイルスフリーの「あたらないカキ」の生産を実現。安全性を強みに、国内外への展開を目指す。
海洋深層水を活用、特許技術で浄化
養殖したカキは「エイスシーオイスター2・0」と名付けた。東京大との共同開発で富栄養性、低温安定性に優れた海洋深層水を使った微細藻類の大量培養技術を確立。専門家の指導を受け、陸上で成貝まで養殖するノウハウを築いた。
「2・0」は一般的なカキよりアミノ酸やタウリンが多く含まれ、甘みが強い。卸売価格はやや割高の1個300~500円。現在の生産量は年間700個で、3年をめどに45万個まで拡大する計画だ。
ゼネラル社はカキの食中毒リスクをなくすため、約10年前に細菌やウイルスのない成育環境、餌の研究を始めた。太陽光が届かない深海からくみ上げた海洋深層水には、人に有害な細菌が含まれない点に着目。国内最大の取水量を誇る久米島に子会社を設立した。
海洋深層水にはカキの餌となるプランクトンも存在せず、最大の課題は大量の植物プランクトンの培養だったという。餌の与え方や水温・水質の管理など複合的な適性条件も調べ、独自の技術で約11カ月の成育と通年出荷が可能となった。
島で稼働する「海洋温度差発電」に使用された海洋深層水が、成育に最適な水温だと判明。二次利用して環境負荷や生産コストの低減を図っている。
東京・八重洲で開かれた発表会で、ジーオー社の鷲足恭子取締役最高執行責任者(COO)=仙台市出身=は「持続可能な技術を確立させたかった。われわれは先人から養殖技術を受け継いだ。次は私たちが将来を担う子どもたちに継承する番だ」と話した。