「あだ名禁止」問題、芸人への“ディスりあだ名”や“容姿いじり”に飛び火の可能性

ここ最近、話題を集めている、小学校など教育現場での“あだ名禁止”問題。

 いじめにつながるおそれがある、というのが理由らしいが、あだ名やニックネームは、親しみを込めて名付けたり呼んだりする、プラスの要素も大きい。そのため、さまざまなメディアでこの“あだ名禁止”をめぐり、議論が繰り広げられている。

“見た目いじり”で命名された高木ブー

 ところで、芸能界は古くからあだ名やニックネームが当たり前のように使用される世界である。最近でも、みちょぱやフワちゃんなど、ニックネーム的な芸名を使用する人気者も多数いる。

 今回の話題の発端は、クラスメートなどに、身体的特徴や不名誉なことなど、本人が嫌がるようなあだ名をつけてしまうことがあるという点だが、芸能界にはこういう例は昔から存在する。

高木ブーさんなんかは、ズバリその見た目で、クレージーキャッツのハナ肇さんが命名した、“見た目いじりの代表”のような名前ですし、たけし軍団も、ギリギリのラインの名前をノリでつけられています。ジャニーズのグループ名だって、ジャニーさんから最初に聞かされたとき、戸惑ったというエピソードは結構ありますしね。パワハラにつながる可能性もあるため、本人が嫌がれば無効になるようなことも今後は出てくるのでしょうが、そういう文化です」(芸能記者)

「おしゃべりクソ野郎」(品川祐)
「クソ煮込みうどん」(狩野英孝)
「元気の押し売り」(ベッキー)
「月9バカ」(木村拓哉)
「昼メガネ」(タモリ)
「迫りくる顔面」(高橋英樹)

 近年のテレビ界でのあだ名といえば、有吉弘行ではないだろうか。彼の再ブレイクのきっかけのひとつになったのが、共演者たちに数々のあだ名をつけていったことだった。

「有吉さんの付けるあだ名は、ディスりの領域ではありますが、その人の本質を臆することなく発せられたものなので、多くの人にウケました」(前出・芸能記者)

教育現場であだ名禁止令が出たら…

 こういったあだ名が面白いとして、そのノリが学校に持ち込まれた場合、たしかに問題が生じる可能性は考えられる。大人の世界と子供の世界では大きな差はあれど、言う側と言われる側の信頼関係が必要だと言うのは、バラエティー番組などを手がけるある放送作家。

「いじりやディスを盛り込んで笑いもとるというのは、相当高いセンスが必要です。つける側はもちろんですが、これを受けて返す側にもセンスが必要なんです。あだ名にかかわらず、いじりやディスりを、いじめやパワハラ的に見せないというのは、そこにたくみなセンスと技術があるからなんです」

 お笑いやバラエティーの世界では、“あだ名禁止”に繋がってしまう身体的特徴などをいじって笑いを取る、“容姿いじり”が問題視されたばかりだ。

 たんぽぽの川村エミコは、幼少時代に「粘土」というあだ名をつけられた過去をもち、容姿について自虐ネタを披露してきたが『わたしもかわいく生まれたかったな』というエッセイ集を発売している。アジアンの隅田美保は、大御所芸人らから横顔が“靴ベラ”と言われて笑われるのが実は嫌だったと告白したことも。

「そこで笑いをとるのは違うんじゃないの、という流れができました。もちろん、自らの容姿をうまく活かして笑いをとる人もたくさんいます。それがいじめやパワハラに感じられるかどうか、行き過ぎないようなラインの見極めは大事ですね」(前出・放送作家)

 近年は、後輩芸人やスタッフを叩いたり蹴ったり、または過激なチャレンジをさせることで笑いを取るスタイルは減少し、マイルドなものに置き換えられたりしてきている。

「食べ物を粗末にしたり、外国人いじりをしたりで笑いをとるなど、さまざまなことが問題視され、変化してきました。学校のあだ名問題も、今は全面的に禁止という流れにはならないと思いますが、これが世の中的に『あだ名で呼ぶのはどうか』という空気ができたとき、テレビ界でも対応をしていくことになるのではないでしょうか」

 センスあるいじりが見られなくなってしまうのは、できれば避けてほしいところだ。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉

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