イチゴがトップシーズンを迎えています。店頭にはさまざまな種類のイチゴが並んでいますが、今人気の「あまおう」「とちおとめ」には意外な関係があるそうです。詳しい話を野菜ソムリエプロの吉田謹子さんに伺いました。
農水省データベースには396種類も登録
農林水産省の品種登録データベースはさまざまな農林水産植物が登録されています。このデータベースによれば、イチゴ属だけで396種類も登録されています。
「登録出願者などはもちろんですが、品種ごとの特徴や品種改良のための交配についても掲載されています。もちろん、最近人気を二分する『あまおう』『とちおとめ』も掲載されていて、あまおうは福岡県、とちおとめは栃木県が品種登録者になっています」(吉田さん)
「とよのか」に代わった西の横綱「あまおう」
かつて福岡県はイチゴの西の横綱と呼ばれた「とよのか」を中心に、生産量トップの栃木県に迫る生産量全国2位につけていました。
「しかし、近年は現在の東の横綱と呼ばれるほど人気になった栃木県の『とちおとめ』の登場により、全国2位は維持しているものの、栃木県にはとどきませんでした。そこで福岡県では、少しでも差を詰めるべく2005年に満を持して『あまおう』を投入。
あまおうは、品種名は『福岡S6号』ですが、実の特長を表す4つの言葉、『あ・赤い』、『ま・丸い』、 『お・大きい』、『う・うまい』の頭文字に加えて、『甘いイチゴの王様になるように』という願いが込められて一般公募で命名された販売名です。
あまおうは大粒で味も良いため、一気に人気が高まって、現在西の横綱と呼ばれるようになり、東の横綱『とちおとめ』と人気を二分するようになりました。
そこで栃木県では、近年、あまおう人気に押されないようにと、とちおとめに代わる濃厚な甘みの新品種『とちあいか』をデビューさせ、2027年にはとちおとめととちあいかの栽培面積を逆転させて、世代交代を図る計画だそうです。まさにイチゴ戦国時代ともいえるのではないでしょうか」(吉田さん)
「あまおう」と「とちおとめ」は意外に近い親戚関係?!
この「あまおう」と「とちおとめ」は、実は近い親戚関係にあるそうです。
「『とちおとめ』は父『栃の峰』と母『久留米49号』との間に生まれています。一方、あまおうは父『さちのか』と母『久留米49号』との間に生まれた『92-46』を父に、『久留米53号』を母にして生まれています。
つまり、『とちおとめ』から見ると、『あまおう』は父違いのきょうだいの子にあたり、意外に近い親戚関係にあることがわかります」(吉田さん)
イチゴの品種はさまざま。その地域だけしか栽培していない品種などもあり、個性も豊かだそうです。いろいろな種類のイチゴを味わって、春を楽しみましょう。