「かき一夜干し」販売本格化 復興を背負う柱に

食品加工業の五光食品(宮城県塩釜市)は、東日本大震災での被災後に開発した新商品「かき一夜干し」の販売を本格化させる。独自の乾燥製法により、カキのうま味はそのままに冷蔵で1年間保存可能となった。海外への輸出も視野に入れ、会社の復興を背負う主力商品に育てる計画だ。
 かき一夜干しは宮城県沿岸で水揚げされたカキを使う。天日干しを応用し、紫外線を照射して乾燥させることで、生がきのうま味成分を残しつつ水分を抜いているのが特徴だ。調味料や添加物は使わず、殺菌しているため胃にも優しいという。
 五光食品は別会社の事業を引き継いで2008年に設立された。生がきの卸売りが中心だったが、新たに導入した冷凍設備などが震災の津波で全滅。赤倉賢社長は工場建屋の復旧後、「付加価値がないと生き残れない」との考えで加工品作りにかじを切った。
 12年に協力工場と薫製などのレトルト商品を売り出した後、よりうま味を残した天日干しを構想。科学技術振興機構や八戸工大教授の協力を得て、グループ化補助金も活用しながら独自製法を開発した。17年に一夜干しとして商品化し、1個200円で通販サイトなどで販売してきた。
 近年は真空パック設備を導入し、生産能力を当初の約30倍となる1日1万6000個に伸ばした。品質向上も進め、食品検査で冷蔵1年、常温3カ月の保存期間を表示できるようになった。今後はスーパーや輸出向けに販路を広げる方針。新たに6個1080円の袋詰めも考えている。
 レトルト品は首都圏のスーパーやネット通販で浸透しつつあり、20年3月期の売上高は約1億2000万円に上った。ただ昨年は新型コロナウイルスの感染拡大による旅行自粛で土産物需要が激減。一夜干しに反転攻勢の期待がかかる。
 加工品作りを中心で担ってきた平間正行常務は「震災から10年、前だけを向いて試行錯誤してきた。オンリーワンの一夜干しを一刻も早く売り上げの柱にしたい」と抱負を語る。

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