杏林大学医学部精神神経科教授の古賀良彦を中心とする『睡眠改善委員会』は、家庭用睡眠計を用いて睡眠を計測することにより、中途覚醒と「かくれ不眠」5タイプの関係を調査した。
同委員会では、睡眠自体を軽視している人や不眠症の専門治療までは要しないものの、一時的な不眠症状が現われていたり、睡眠に対して悩みをもちながらも、周囲に相談できずに抱え込んでいる人を「かくれ不眠」と命名しており、「かくれ不眠」は、症状や生活習慣に応じて5つのタイプに分類されることが分かっている。
■重度の「かくれ不眠」の原因は中途覚醒にあった!
かくれ不眠5タイプの中でも「自分は大丈夫タイプ」「高ストレスタイプ」は、最も本格的な不眠症に近い重度のかくれ不眠ということが分かっていたが、今回の調査により、両タイプは、睡眠途中で目が覚める「中途覚醒」の回数が多く、時間も長いということが判明した。特に「自分は大丈夫タイプ」は10分以上無体動な状態が続く「ぐっすり睡眠時間」も極端に短いということが分かった。調査の結果から、特に重度のかくれ不眠は中途覚醒に原因がある可能性が高いということが明らかになった。
■「中途覚醒」によるかくれ不眠はビジネスにおいても弊害が・・・
中途覚醒に起因する可能性が高い「自分は大丈夫タイプ」「高ストレスタイプ」のかくれ不眠は、ビジネスシーンにおいても多くの弊害をもたらしている。2013年2月に実施された勤労者における睡眠に関する調査によると、「高ストレスタイプ」では、「全般的に、仕事への意欲が下がった」また、「難しい仕事に取り組もうという意志が弱くなった」と回答した人が共に50%強もおり、モチベーションの低下が顕著な他、転職・退職意向も目立った。
また、「新しいアイデアや工夫が思いつかない」「以前なら、なんでもなくできた事が難しい」など、仕事の遂行能力が低下するほか、外出が億劫、生活上の諸活動に対する意欲低下などの傾向は、「自分は大丈夫」タイプで最も顕著に表れ、人と話すのが煩わしい、怒りっぽくなったなど普段のコミュニケーションへの影響も出ている(※20~64歳の勤労者を対象としたインターネット調査結果)
■中途覚醒によるかくれ不眠を改善してビジネスパフォーマンスアップには!?
睡眠改善委員会では、本調査結果より、睡眠計等を活用し自身の睡眠を測ることで睡眠トラブルの原因を探ることを提案している。もしも「中途覚醒」または「ぐっすり睡眠」が平均より劣る場合は、「自分は大丈夫タイプ」または「高ストレスタイプ」である可能性が高く、薬局で購入可能な睡眠改善薬を使用するセルフメディケーションによる対処が推進される。上記に当てはまらない人は、自分なりの入眠儀式の実践、意識改善、日常生活に運動を取り入れる等、日頃の行動にセルフケアを取り入れることで、ある程度の改善が見込まれるという。同委員会では、睡眠計などを活用し「客観的に自分の睡眠を測る」ことで、自身の睡眠状態を認識し、状態や程度に応じた個々のスリープマネジメントに取り組むことを推奨している。
<調査概要>
○調査対象と回収サンプル数:登録会員男女134名
※かくれ不眠者:12のかくれ不眠チェック項目に一つでも該当する人
○調査方法:登録会員を対象としたモニタ調査結果調査(オムロンヘルスケア「ウエルネスリンク(現:わたしムーブ)」会員活用)
○補足:オムロンヘルスケア「ウエルネスリンク」会員のうち、睡眠データ計測対象者全2,451名に配信し621名のアクセスを獲得。『睡眠計測データ』対象期間は、2012年9月2日~2013年3月31日まで(2012年12月23日~2013年1月6日の年末年始期間を除く)。その内、2012年12月2日~12月15日の連続データが揃っているもの、それがない場合は上記期間に近い連続データを得られるものを優先して134名分(年齢ウエイト補正)を標本として設定。
<かくれ不眠とは>
睡眠改善委員会により命名された呼称で、以下の条件に当てはまる状態を指す(単なる寝不足とは異なる)。
●専門治療が必要ではない
●軽度かつ短期的な不眠症状がある
● 睡眠の悩みを抱えている
●良い睡眠への積極的な対処を行っていない
現代社会が抱える仕事・人間関係のさまざまなストレスなどにより、このような状態を持つ人は潜在的に多いと考えられていたが、調査の結果、20~40代の約8割が「かくれ不眠」に該当することがわかった。
<かくれ不眠5タイプ>
約4万5千人におよぶ生活者の「かくれ不眠」チェックシート(全12項目)のチェック数及びチェック項目から特定された5つのタイプ。
■「生活不規則」タイプ
日常の生活やお仕事で生活パターンが不規則になり睡眠が削られている・・・というかくれ不眠のタイプ
■「自分は大丈夫」タイプ
睡眠環境の上で、実は多くの問題をかかえており、本格的な「不眠症」に最も近いかくれ不眠のタイプ
■「高ストレス」タイプ
不十分な睡眠(量と質)によって、さまざまなストレスが顕在化している恐れのある、かくれ不眠のタイプ
■「眠りが浅い」タイプ
眠っていても「眠りが浅い」ために、良質な睡眠とはなっていない、かくれ不眠のタイプ
■「初期かくれ不眠」タイプ
睡眠について何らかの悩みを持ち、今後本格的なかくれ不眠に陥る心配があるかくれ不眠のタイプ