「がん医療拠点」宮城県も指定へ 国基準を部分的に緩和、県内診療実績の9割カバーへ

全国どこでも質の高いがん医療が受けられるように国が指定する「がん診療連携拠点病院」に関し、宮城県が国基準に準じる病院の独自指定を検討している。国指定の8病院だけでは県内の診療実績の5割弱しかカバーできず、独自指定の病院とも診療データの共有化などを進めて県全域でがん医療の水準を高めていく。

診療報酬加算の利点も

 国指定の拠点病院は、県内のがん医療を先導する「都道府県拠点病院」の2カ所と、2次医療圏単位で置かれる「地域拠点病院」の6カ所=表=。

 8病院は、がん診療連携協議会を設置。高度な手術や薬物療法、緩和ケアに関して役割分担や集約化を進め、診療データの共有と分析に取り組んでいる。

 一方で、県内では拠点病院以外でがん診療を受ける患者も多く、2016~19年の実績で52・5%に上る。「身近な病院でがん診療が受けられること自体は悪いことではない」(県健康推進課)が、豊富な症例に基づき医療の質を高め合うという拠点病院制度の効果は薄れかねない。

 国指定の拠点病院は大腸がん、肺がん、胃がん、乳がん、前立腺がん、肝・胆(たん)・膵(すい)がんの診療体制を整えることが必要。手術は年400件以上、放射線治療は年200人以上といった診療実績の基準をいずれも9割以上満たすことが条件となっている。

 県内のがん部位別の手術実績割合はグラフの通り。仙台厚生病院(仙台市青葉区)は肺がん手術の22%を担うが、乳がんや前立腺がんの実績がなく、国指定は受けられない。東北公済病院(同区)は乳がん手術の22%を占めるが、放射線治療を実施しておらず、同じく国指定は難しい。

 県は来年度以降、これらの病院を独自に「拠点病院に準じる病院」に指定する方針。国基準を部分的に緩和し、特定のがん部位で一定の診療実績があれば他の実績がなくても指定要件を満たしたこととする。

 独自指定病院はがん診療連携協議会に加わり、国指定病院と同等の役割を担う。がんの診療報酬が加算される利点もある。県は、国指定と県指定を合わせ、県内のがん患者の約9割をカバーできると見込む。

 県保健福祉部の大森秀和副部長は「県指定病院にも、がん医療の質を高め合う仕組みに入ってもらう」と説明する。

 県はこのほか、科学的根拠に基づいた効果的な治療をどれだけ実施しているかを評価する「QI指標」の設定を進めるという。

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