SNS上などに中傷や個人情報を投稿されたとして、福岡市の男性が知人に投稿禁止などを求めた訴訟で、福岡地裁(林雅子裁判官)が、男性に関する投稿を将来にわたって禁じる判決を言い渡していたことがわかった。インターネット上の投稿の趣旨を限定せず禁じるのは異例。識者は「表現の自由を不当に制約するおそれもある」と指摘する。
14日付の判決によると、男性は知人を貶める内容の書面を自宅に送るなどの迷惑行為を行い、知人も男性を中傷する投稿を繰り返してトラブルとなっていた。知人は、第三者が閲覧できるLINEやグーグル検索で表示される公的施設の口コミ欄に投稿し、男性の氏名や住所、電話番号などの個人情報を書き込んだほか、「ストーカー」といった中傷にまで及んだ。知人が男性の迷惑行為に対する損害賠償を求めて提訴し、男性が反訴していた。
判決は、知人の十数件の投稿は名誉毀損やプライバシー侵害に当たると判断。「男性が自宅で安心して生活することが困難になった」として知人に33万円の支払いを命じた。
その上で、「知人が今後も同旨の投稿をする蓋然性は高く、名誉やプライバシーが侵害されるおそれは継続している」と指摘。知人に対し、「氏名、住所、電話番号、所属団体等の記載を含む男性に関する投稿をしてはならない」と命じた。平穏な生活を妨害したとして男性にも11万円の賠償を命じた。
ネットの中傷問題に詳しい神田知宏弁護士は、「投稿の事前差し止めは極めて異例」とした上で、「『○○さん、こんにちは』でも許されないことになり、表現の自由を不当に制約している」と懸念を示した。