札幌市北区の資源ごみ回収施設で現金1000万円が見つかってから3か月。道警には4月末までに有力な手がかりは寄せられておらず、民法の規定で、5月1日に拾い主である市に所有権が移る可能性が高い。いったい誰の1000万円だったのか、ごみに紛れた理由とは――。(林麟太郎)
■保管3か月
大量の1万円札が見つかったのは、1月30日。札幌市の委託業者が西区と手稲区で回収した雑がみを施設で仕分けていたところ、作業員が見つけた。
道警が事態を公表した2月21日以降、道内外から「自分が落としたのでは」との問い合わせが相次いだ。これまで道内外から14人が申し出て、うち10人が正式に遺失届を出したという。
道警は、ごみの回収ルートや見つかった現金の外見的特徴などを踏まえ、14人の証言と付き合わせたが一致しなかった。道警幹部は、「虚偽と認識しながら届け出れば詐欺未遂罪などに問われる可能性はあるが、内心の確認は困難」とし、立件はしない方針だ。
民法や遺失物法の規定では、遺失物の保管期限は3か月と定められており、期限までに所有者が見つからない場合は、拾い主に所有権が移る。今回の場合、市の委託業者が見つけたため、所有権は市となる。
高額の現金がごみの中から見つかる事例は道外でも相次いでいる。2021年10月には津市のリサイクルセンターで286万円、22年には大津市の大型ごみ処理施設で約500万円が見つかっている。ともに落とし主は見つからず、所有権は市に移ったという。
■遺品整理で?
そもそもなぜごみから現金が見つかるのか。「遺品整理士認定協会」(千歳市)の長谷川正芳常務理事は、「遺品整理時に誤って捨てたのでは」と推測する。
同協会によると、高齢者は多額の現金を自宅内に保管することが多く、「男性は本棚の本の間や屋根裏、女性はシンクの下や棚に隠すことがよくある」という。家族が知らないまま本人が亡くなったり、本人が高齢になり現金の存在を忘れたりすると、ごみに紛れる可能性がある。
長谷川常務理事は「遺品整理時、現金がある可能性が高い箱や封筒の中身を丁寧に確認すべきだ。生前に『家じまい』について家族で話し合うことも必要」と指摘する。
札幌市の担当者は「過去に高額な現金の拾得物が市のものになったケースは聞いたことがない」といい、「所有権が確定した場合は手続きを進め、用途を検討していきたい」としている。