「たばこ病」患者増大で市場急成長 高喫煙率の団塊世代高齢化と黄砂が原因か

中国からの黄砂による喘息患者の増加や、喫煙率の高い団塊世代の高齢化により、呼吸器領域の国内医療用医薬品市場の成長が見込まれている。
 富士経済は10月23日、医療用医薬品国内市場の調査結果について発表した。調査は6月から8月にかけて実施された。
 国内の呼吸器領域の医療用医薬品市場では、喘息治療剤、COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療剤、鎮咳・去痰・呼吸促進剤、消炎酵素・総合感冒剤、禁煙補助剤の5品目について調査を実施。特に、喘息治療剤とCOPD治療剤は成長が見込める市場として注目されている。
 喘息治療剤の2012年の市場規模は1,960億円と見込まれ、2015年には2,090億円まで拡大すると予想されている。喘息による死者数は一貫して減少傾向にあるものの、厚生労働省統計や各種疫学調査の結果によれば、小児喘息と高齢者の喘息患者を中心に増加傾向にある。喘息の原因には、大気汚染物質やタバコ、防虫剤などが挙げられる。工場からの排煙による大気汚染物質の影響は比較的小さくなりつつある一方で、中国からの黄砂が問題となっており、喘息発症に影響を与えると懸念されている。
 また、COPD治療剤の2012年の市場規模は460億円と見込まれ、2015年には785億円、2020年には1,139億円まで拡大すると予想されている。COPDは、慢性気管支炎や肺気腫、びまん性汎細気管支炎など、長期にわたり気道が閉塞状態になる病気の総称。長期の喫煙と高齢化が最大の危険要因とされる。喫煙者に起こりやすいことから「たばこ病」などとも呼ばれている。
厚生労働省最新たばこ情報ホームページより
 たばこ産業の「平成24年全国たばこ喫煙者率調査」によると、平成24年の成人男性の平均喫煙率は34.7%で、昭和41年の83.7%から大きく減少した。成人女性の平均喫煙率も、平成24年は12.1%で昭和41年の18.0%から減少するなど、喫煙率は今後も低下すると予測されている。しかし、喫煙率の高い団塊世代の高齢化により潜在患者数は増加し、2020年には810万人に達すると予想されている。患者の増加と高齢化が、COPD治療剤市場の拡大につながっているものとみられる。
 ただし、これらの市場拡大は、いずれは国民全体の医療費増大につながっていくことを同時に認識しておく必要がありそうだ。

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