港町・宮城県気仙沼市ならではの仕事の現場を訪ねるツアー「ちょいのぞき気仙沼」が人気上昇中だ。普段は目にすることができない水産都市の裏側に楽しみな がら迫れる企画とあって、親子連れの参加が増加。2年目の本年度は通年で毎月開催し、東日本大震災後に低迷する観光業の新たな起爆剤として充実を図ってい る。
17日は10人が木戸浦造船を訪問。船首の底で水の抵抗を減らす球状突起物のバルバスバウに触れ、建造中のサンマ漁船の船内にも入った。一 般には知られざる世界に浸った同市の公務員柏康弘さん(44)と長男武尊(たける)君(8)は「迫力があって面白かった。勉強にもなった」と満足げだ。
製氷会社で氷切りに挑戦したり、発泡スチロール箱の販売会社では箱を重ねて持ち上げるなど体験型の内容が多い。自ら殻むきしたウニ丼を味わう食や、自然体験を楽しむコースも人気を集めている。
ツアーは一般社団法人リアス観光創造プラットフォーム(同市)や市民有志組織が企画し、会社見学や自然体験など毎月5、6コースを用意。本年度はこれまで開催した4回に463人が参加し、既に前年度(5回361人)を上回った。
認知度のアップが今後の課題だが、気仙沼、一関両市の全小学校にチラシを配布したところ親子連れの参加が増えた。仙台の私立小にも配布を始めたという。
協力する事業者も前年度の12から16に増えた。漁具を扱うアサヤは、タコつぼや電気ショッカーを当てるクイズで盛り上がる。震災体験も伝える。廣野一誠専務は「市の基幹産業の水産業は人手不足。ぜひ子どもたちに興味を持ってもらいたい」と語る。
このツアーのように、旅行者を受け入れる地域がプランを企画する形態は「着地型観光」と呼ばれ、旅先でしか味わえない体験を求める本物志向のニーズに応える試みだ。
市震災復興支援チームの松谷慶子さん(34)は「ツアーの受け入れは仕事内容の理解につながり、従業員の意欲も高まるようで、協力事業者は大いにやりがい を感じている。『気仙沼は見どころがない』と言う人もいるが、観光業と水産業を融合させたツアーを地域の新たな魅力として定着させたい」と話す。
[メ モ]「ちょいのぞき気仙沼」の次回は8月11日。「水揚げから解体まで!魚の流通を学ぶ(海鮮丼付き)」「ロープを編んで漁具キーホルダーをつくろう」 「唐桑ツリーハウスピクニック」など計6コースを用意した。事前申し込みが必要で、料金は大人の場合1人500~7000円。JR一ノ関駅から往復バスも 運行する。連絡先は気仙沼市観光サービスセンター0226(22)4560。