風呂好きの社員が開発した、ユニークな扇風機がある。家電メーカーのサンコーが手掛ける、のれる扇風機「のれせん」(希望小売価格9980円)だ。昨年4月に発売したところ、初回生産分の5000台が完売。今年用意した1万2000台は売り切れ、追加した3000台も完売したという。昨年から予想以上のヒットを続ける理由について、同社に聞いた。 【画像】今年も即完売した「のれせん」(全7枚) のれせんはその名の通り、製品に乗ると足元から風が出る扇風機。本体に自動スイッチを内蔵しているので、片足を乗せた瞬間スイッチが入り、下りると自動で止まる仕組みだ。風呂上がりにすぐ乗れるよう、体が濡れたままで使用可能。内部に入った水は、底面の水抜き穴から出る仕様となっている。 風量は強弱の2段階で、スイッチで切り替える。最大風速は秒速35メートルだ。個人差はあるが、強モードならば20秒ほどで涼しく感じるという。
流体力学を応用し、風量や風を送る範囲を調整
のれせんは足元から風が出る構造だが、風の取り込み口を本体の側面や裏側に設置すると、風を取り込むと同時に床のホコリを一緒に舞い上げてしまう。そこで、風の取り込み口は本体の上に設置。床のホコリを舞い上げないよう工夫している。 また、効率よく全身に風を送るため流体力学を応用し、風量や風を送る範囲などを調整した。全身を短時間で効率よくクールダウンできるよう、4カ所の風の吹き出し口をデザインしているという。
せっかく風呂に入ったのに汗をかく、ならば……
のれせんの開発担当者である新村孝司氏(同社企画部)は大の風呂好きで、湯船にゆっくりつかるのが日課だという。しかし、夏場の脱衣所は蒸し暑く、せっかく風呂に入ってスッキリしたのに、汗だくになってしまうという不満があった。 新村氏は少しでも涼しくできないかと、扇風機を脱衣所に持ち込んでみたという。しかし、置く場所にも困る上、風も全身に当たらず物足りなかった。温泉や銭湯の脱衣所に置いてあるような、大きな扇風機の風に当たるのはとても気持ちいい。自宅の狭い脱衣所でも、そんな体験ができる扇風機が欲しいと思い立ち、開発に着手。発案から約2年かけて完成させ、昨年発売にこぎつけた。
機能性だけでなく評価された“置きやすさ”
2年連続で完売したのれせんは、あまりの人気ぶりに高額で転売されていたこともあるそうだ。こうした人気の背景について、同社広報部のえき晋介氏は「夏の風呂上がりは男女や年齢問わず暑いものです。こうした小さな不満を解消できる商品だったため、支持されたのではないでしょうか」と話す。 また、えき氏はのれせんのサイズも評価されているポイントではないかと分析している。のれせんは258(幅)×105(高さ)×255(奥行)ミリで、体重計ほどの大きさだ。「のれせんは狭い脱衣所で使うものなので、開発時には置きっぱなしにしていても邪魔にならず、棚や洗濯機と壁の隙間にも収納しやすいコンパクトサイズにこだわりました」 今年発売したモデルは、昨年と機能は変えずカラーを白からグレージュに変更した。「置きっぱなしにしてもより違和感がないようにするためです。カラー見本から男女の社員で投票を行い決定しました」(えき氏) 人気上昇中ののれせんについて、来年の販売数は今年の倍ほどを目指すという。サンコーの新しい定番商品になったのれせんは、どこまで売り上げを伸ばすのか。
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